離婚の慰謝料
週刊誌やテレビで芸能人の離婚が話題になると、慰謝料は何千万だとか何億だとか騒がれるので、離婚には慰謝料がつきもののように思われがちですが、必ず慰謝料が発生するとは限りません。
離婚する当事者が”慰謝料はお互いに請求しない”と合意すれば慰謝料は発生しませんし、逆に夫婦が「夫が妻に慰謝料1千万円を支払う」と合意すれば、たとえ一般的な相場が300万円程度であっても、1千万円がその夫婦の慰謝料ということになります。
また「慰謝料は離婚時に経済力のある男性が女性に支払うお金」と思っている方もいるようですがそのようなことはありません。
慰謝料には本来「精神的苦痛を受けたことに対する損害賠償」という意味があるので、夫婦の一方が他方配偶者からに損害賠償しなければならないほどの精神的苦痛を受けたのであれば、男性であろうと女性であろうと当然他方配偶者に慰謝料の請求ができます。
ここで重要なのは「慰謝料を請求できること」と「慰謝料が(相手方や裁判所に)認められること」は違うということです。
更に言うならば、慰謝料が認められて公正証書・調停調書・判決書ができたとしても「必ずしも慰謝料全額が受領できるわけではない」ということ・・・厳しいことを書きましたが、慰謝料を請求するのであれば、これらの現実をある程度は理解しておく必要があるでしょう。
慰謝料の法的性質
交通事故で他人にケガをさせると、法律的には不法行為(民法709条)をおかしたことになり、被害者の受けた損害のうち、医療費などの実損害を賠償しなければならなくなります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
更に、この他に入院などで苦しんだ精神的苦痛に対する損害賠償(民法710条)として慰謝料も支払わなければなりません。
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
離婚の慰謝料も交通事故と同じ性質を持つ「不法行為に基づく損害賠償」ですので、離婚に関して因果関係が認められれば財産的損害であろうと精神的損害であろうと請求することができます。
一般的には民法第710条の精神的・非財産的損害賠償のことを慰謝料と言っています。
?慰謝料問題の早期円満解決に必要なのは、冷静さと適切な情報
話し合いで慰謝料の問題を解決しようとする場合は、相手に理由と責任を納得してもらう必要があります。
感情的に「あなたが悪い!責任を認めろ!慰謝料を払え!」と迫ったところで、それだけで問題が解決することはまれでしょう。
インターネット上には、内容証明郵便1通で簡単に片付くかのような表記もちらほら見受けられますが、普通はそう簡単に片付くものではありません。
相手方もある程度責任があることは理解しつつも、その具体的な根拠や責任の程度など、正確に理解できなければ、対処できないのが普通です。
根拠となる法律や判例等の情報はもちろん、相手方の性格に合った手続きの進め方についても、冷静に分析と検討をする必要があります。
慰謝料は基本的に相手方の非難に繋がるデリケートな問題です。言うべきことはキチンと言わなければなりませんが、同時に相手方を過度に傷つけることのないよう注意しましょう。