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貧しいけれど幸せだった日々
私たち夫婦は今、小学生の息子二人と共に海外に住んでいます。主人は1ヶ月おきぐらいに仕事で日本に行き来しており、総じて1年の約半分は日本に行っています。これは8年間にわたる不倫から主人を帰還させつつある私の体験記です。同じような体験をされている方の手助けになることを願い、投稿させていただきます。
14年前に結婚してから外国に移住するまでの約9年は、狭い団地に住み共働きでやっとの暮らしでした。2人の息子を毎日託児所に預けて働き、私は仕事から帰ると、凝った料理も作れず、夕食の片づけもそこそこに、息子たちをお風呂にいれて寝かせると、つい一緒に寝入ってしまう毎日。
いつも夜10時すぎに帰宅する主人がひとりで夕食の洗い物をしてくれている音を聞きながら「ごめんなさい」と思いながらも疲れきって床から出られず、たまに主人に体を求められても応じる体力など残ってはいませんでした。
そんな暮らしでも、週末には家族でピクニックをしたり年に一度は旅行をしたりと、かわいい子供たちを囲んで幸せな日々でした。私は、優しく前向きで貧しさも笑いに変えてしまえる主人が大好きでした。
不倫の発覚
5年前、夫婦の夢だった海外生活が実現して幸せをかみしめた元旦、主人が一人の女性と不倫をしてすでに3年が経っていることをパソコンのメールから知りました。主人の携帯をこっそり見ると、メールの相手とよく似た怪しい取引先の会社名。
地の底に落ちていくような気持ちで携帯の怪しい取引先に電話すると、日本は夜の8時だというのに女性の声で「もしもし~♪」。悩んだ末、主人にたずねると、無言で目を伏せ認めようとはしませんでした。
その後、私が苦しんでいるのを見ていつか相手の女性と別れてくれるだろうと期待しつつ「責めずに居心地の良い家庭を」と努力してきましたが、それからも不倫は続いていました。
主人が日本にいる間は携帯の電源が切られていることもよくあり、私はとりつかれたように電話をしては「NTTドコモです、電源が入っていないのでかかりません」のアナウンスを恨めしく聞いていました。その頃から私の中で次のような決意を固めました。
「いつか主人が私のもとに帰ってきてくれたときに誰の目も気にせずに暮らせるように、つらいけれど親・姉妹・友人など私たちを知る人には絶対に相談しない!」主人は、結婚当初と変わらず家ではいい夫・いいお父さんで、私に「愛してるよ」と言い、夜の生活も普通にありました。
子供たちをとてもかわいがってくれるため、その度に「もう別れてくれたのかな」と思いながらも、それをたずねることで険悪なムードにしたくなくて、100%の幸せを感じることができないまま2年が過ぎました。
その後、主人と相手の女性が4泊の国内旅行をしたことを、クレジットカードの明細からホテルに確認して知りました。全身が凍りつきました。
主人に「相手の女性と別れてほしい」と頼みましたが、やはり無言で目を伏せ何の回答もありませんでした。「私のどこが良くない?直すからおしえて」と言っても「完璧だよ。何も悪くないよ」と答えるだけで話し合いになりません。
新婚の頃のように安心して愛されたい。私の人格を認められたい。何をしても彼女と比べられているような気がし、合格発表を待つ受験生のような気持ちで過ごす毎日。主人に認められるために、私はそのころ軌道にのってきた仕事に打ち込み、良い妻、良い母、いい女を目指しました。
夫婦なんだから「一緒に考えよう」
そして1年が過ぎ、今度は二人が1週間の海外旅行をした事実を知ったとき、もう限界と感じたので話し合いを持ちました。主人はやっと話を聞いてくれるようになり「ごめん。俺も離婚をするつもりはない。日本で彼女に会って別れるように話すよ」と言ってくれました。
主人と話し合うときは決して責めず「一緒に考えよう」という姿勢をとることにしました。「こうなったのはあなただけが悪いとは思っていないよ。夫婦なんだもの、半分は私も悪かったんだと思う。
だからいっしょに考えて解決していこう。」と言い続けたら、少しずつ彼女とのことを話してくれるようになって、別れ話をする気になってくれました。
とはいえ、自分で動き出さなければ何も解決しないと思い、私はインターネットで不倫の解決方法を調べました。証拠を取り内容証明郵便で慰謝料を請求すること、慰謝料は相手の女性にも請求できることを知りました。
外国からでも素行調査の依頼ができる探偵会社を探し出して、まず相手の女性の身元調査から依頼。初めに不倫をみつけたメールの相手と同じ名前の名刺が主人の名刺入れにあったので簡単につかめ、相手は既婚、ご主人と中学生の息子さんがいることが分かりました。
次に主人が仕事で日本に発つ日に素行調査を依頼。「成田空港から直行して彼女と会って食事をし、ラブホテルで一夜をすごしているようだ」と探偵会社から随時入る報告の電話を受け取りながら机に向かって寝ずに過ごした一夜の苦しさはとても言い表せません。調査は成功、みごと二人がホテルに入った証拠をビデオと写真に収めました。もちろん主人はそれを知りません。
自殺したら天国にいけない
その頃の私はつらすぎて限界状態でした。子供たちの前でも笑えずイライラし、主人の携帯に電話しては落ち込み、一人になると声を出して泣き、車を運転していると涙で前が見えなくなり、死んだらどんなに楽だろうと思い真剣に死ぬ方法を考えるようになりました。
でも、ある映画で「自殺したら天国にはいけない」と言っていたのを思い出し、「いつか天国の母に会うために自殺だけはしてはいけない!」と歯をくいしばりました。
夜眠れず、朝目覚めると深海に沈み入るように落ち込み、痩せてジーンズのウェストはゆるゆるになりました。離婚したらこの苦しさから開放されるけれど、主人と相手の女性が幸せになるのを見るのはもっと耐えられない。「きっと相手を深く愛している人ほど苦しさから逃れるために離婚するのかもしれない」と思いました。
素行調査の翌日、私は相手の女性に電話して直接「主人と別れてほしい」と言いました。彼女は否定するわけでもなく「今仕事中なので夜こちらから電話します」と言い、その後主人と連絡し合ったらしく、主人から「彼女と話さなくていいよ。俺が話すから。ごめん。」という電話がきました。
私が行動を起こしたことが主人には衝撃だったのでしょうか、これをきっかけに、私の説得もあり主人が相手の女性に別れ話をして、日本を後にしてくれました。主人が帰宅してからは、まずは別れ話をしてくれたことに感謝し、様子をたずねると、「別れるのは難しいんだ」と言います。
なぜならこれまでにも主人が別れ話をしたことがあり、そのたびに相手の女性は自殺をほのめかしたりショックのあまり過呼吸状態になって非常に苦しそうだから、とこのと。
相手の女性の家庭は、主人と出会うまでは普通の家庭だったけれどその後は何年も家庭内別居の状態で、彼女自身は離婚して自分の収入で息子さんを育てていくことまで考えているため、主人が「離婚はよせ」と止めているということでした。
女性との関係は終わっていなかった…
別れる努力をしてくれている主人の力になれるなら、と思い、不倫相手のご主人にも私から2度電話しました。「主人は私と離婚するつもりはなく、あなたの奥様とはもう会わないと言っています。どうかこれから奥様を支えてあげてください。」と話すと、
「二人のことは知っていました。妻とは昔のようになりたいと願っています。子供がいるので離婚は思いとどまるように私からも説得しているところです」という回答でした。
私は夫に「彼女がつらいときはご主人が支えてくれるから大丈夫だよ。ご主人はとてもいい人で、彼女を愛してくれているようだから心配いらないよ。」と伝えると、夫も「ご主人には申し訳ないと思っている。」と素直に私の行動を感謝してくれました。
それから約1ヶ月、相手の女性から毎日のように無言電話があるため自宅の電話番号を変えました。主人の携帯の番号は「仕事に支障があるから」と言って変えてはくれませんでしたが、相手の女性からの涙声のメッセージを主人が私の目の前で削除しつづけた結果、二人の関係は終わったと思いました。その後、ちょうど年末だったので家族で帰国し、クリスマスには主人からのプレゼント、最高に幸せな日々が続きました。
しかしその半年後、電話会社の明細から少なくともこの1ヶ月、主人が相手の女性と毎日のように携帯で連絡をとりあっている事実を知り、またも地の底に落ちました。後で知ったことですが、これは不倫相手の女性が離婚を望んで夫と別居を始めた時期でした。
彼女を無視し続けて忘れさせることがせめてもの優しさだと主人も分かっていたはずなのに、また連絡をとってしまった…。
日本にいる主人にそのことをたずねると口ごもって「彼女の仕事の事務所を移転する登記のことなどで相談を受けていただけだよ。大丈夫、会ったりしないから。彼女とは別れるから。」と言います。
「私と離婚つもりなの?」と尋ねると「それも考えてる。俺といないほうがお前の幸せのためだ。自分が嫌になったよ。」と言うこともあれば「離婚なんてしないよ。大丈夫だよ、愛してるよ。」と言ったりもします。
私が相手の女性に慰謝料を請求する意思があることを話すと「それだけはしないでくれ。もし彼女が離婚したとしたら自分の収入で息子さんを私立高校に行かせたいって言っていたから、経済的な基盤だけは奪わないでほしい」と言われました。
私は「あなたと別れたって幸せにはならない。あなたを愛してるから一生一緒に生きていきたい」と、電話やメールで伝え続けました。主人が家にいるときは、あいかわらず責めず、笑顔で居心地の良い家庭をつくるよう努力しました。
西田先生との出会い
こんなことはいつまで続くんだろう?どうしたらいいんだろう?私は法的な手段をとることを真剣に考えることにしました。私は悪くないのだから法律が守ってくれるはず。インターネットで法律家を調べ、何社かにメールで相談をし、離婚救急NETというサイトをみつけました。数あるなかでこの事務所を選んだ理由は3つあります。
一つは離婚・不倫専門の行政書士であること。二つめは慰謝料請求の前にワンステップ、「手紙」という方法を提案していたこと。そして海外でも無料で話せるスカイプ電話が利用できることです。
さっそくスカイプで30分の無料相談をしたところ、西田先生の仕事への情熱と悩む人への心遣いに惹かれ、メールでの相談が始まりました。
私は離婚をするつもりはなく、主人もそのつもりはないと思われること、すぐにでも相手の女性に慰謝料請求の内容証明を送りたいのは山々ですが「それだけはやめてくれ」という主人の意向も(今後の仲直りのために)大切にしようということで、以下のような手順で対策を施すことになりました。
1、解決に必要な書面の準備
主人が日本にいる間に「手紙」と「示談書」など、解決に必要と思われる全ての書類を準備しました。西田先生はさすが専門家で、素人にはとても作れない完璧な書類が出来上がりました。
2、夫に手紙と示談書を送る
主人が日本にいるうちに「手紙」と「示談書」を送り、海外の自宅に帰ってきたら私の思いを伝え、示談書にサインをしてもらうことにしました。(予め準備した合意書の内容は以下のとおり)
- 今後相手女性とは会わない、連絡もとらないこと
- 携帯電話からメールアドレスなど、相手女性の情報をすべて削除し、携帯は受信拒否等の対策をとること
- 万が一連絡をとった場合は、相手女性に慰謝料を請求すること
- 夫が私に離婚を申し出た場合・約束を破った場合の慰謝料
3、不倫相手に手紙と示談書を送る
不倫関係を終結させるため、不倫相手の女性に手紙を添えて示談書を送りました。(手紙及び示談書に記載した内容は以下のとおり)
- 7年間にわたる不倫・不貞行為の事実
- 夫は私と離婚するつもりがないこと
- 夫はあなたと別れたがっていること
- 今後夫とは一切連絡をとったり会わないこと
- 連絡をとった場合には即慰謝料を請求すること
4、不倫相手の夫と両親に手紙を送る
不倫相手の夫と両親に手紙を送りました。手紙には”7年間、不倫・不貞行為があった事実”に加えて「主人と別れたあとの彼女を信じ、見守り、支えてあげてください。」という言葉を添えました。
5、不倫相手との直接対決
最後は私が日本に行き、相手の女性、女性のご主人、女性のご両親に直接会って、全員立会いのもとで合意書にサインしてもらうことにしました。日本から帰ってきた主人に予め用意していた合意書のことを切り出すと半ばヤケになって内容も読まず殴り書きのサインをしました。あとで西田先生に相談すると「契約書に印鑑がなくても自筆のサインがあれば有効」との回答を得てホッとしました。
携帯の受信拒否の設定も「勝手にどうぞ」と投げやりな態度。仕方なく私は主人の携帯を操作…しながら悔しくて取り乱し、外のコンクリートに投げつけて壊してしまいました。
不倫相手と対決するため日本へ
私は不倫相手と日本で直接対決をするため夫に「このごろ疲れたからリフレッシュ休暇をください。日本に行って母のお墓参りもしたいし。」とお願いするとあっさりと「いいよ」と言ってくれました。
奇しくも主人と相手の女性が毎年旅行していた時期と重なり「今年はこの時期にガマンして留守番しなくていいんだ」と思うとこれからの大冒険に気合が入ります。
主人にあとを任せ息子たちには「仕事で1週間留守にする」ということにして、家を出ました。日本では成田空港で携帯をレンタルし、相手の女性の住む町の近くのビジネスホテルに滞在。
彼女に会うつもりだということを前もって主人に言わなかったのは、それを知ると日本に行かせてはもらえなかったと思われるためと、もし主人が彼女からそれを聞いて知ったら「彼女と連絡をとった」という証拠になるからです。が、私はホテルから主人に電話して、今回の経緯を話しました。
なぜなら、遅かれ早かれ主人が彼女と連絡をとることになるだろうし、それならこの事実を彼女から聞くより私から話しておきたかったから。主人はあきれたように「もう連絡とったり会ったりしていないんだから、今さらそんなことしなくても…って思うよ」と言いました。でもこうしないと、これから先、私は生きていけない…。
不倫相手の女性の夫に電話をしました。まずはぶしつけな手紙を詫び、お会いしたい旨を伝えると、快く会ってくれました。ただこれは一般的には危険な行為らしく、こうして私が接触することで逆に彼から私の主人に慰謝料を請求される可能性があります。これについては西田先生がかなり神経を使ってくださいました。
実際会ってみるととてもいい人でした。私以上に苦しんでこられたようで、喜んで協力してくださるとのことでした。次に不倫相手女性のお母様に電話をし、会いに行きました。
ご心配をおかけしたことを詫び、誠実に心のうちを話すと、一緒に涙し、孫の幸せのためにも、全面的に協力したいと言ってくださいました。
相手の女性に会う場所は、喫茶店などでは平気ですっぽかされる可能性があるので、女性のお母様にお願いしてお母様の家にさせていただきました。
お母様の前で電話すると「一対一ならともかく、家族がいるような状況では会いたくありません。」と言われたので私も譲らず・・・「いらっしゃるまで待たせていただきます」そばでお母様が「二人だけで会っても話になりません。私からも来るように説得します。」と励ましてくださいました。
主人から離婚を切り出される
いったんホテルに戻ると主人から電話がきました。おそらく彼女があのあと主人に電話したのでしょう、なんと主人から「俺たち、清算(離婚)しよう。もう愛せないから。」と言われました。これまで彼女と別れる努力をしてきてくれたのに…。頭を殴られたような衝撃、体から力が抜けました。
「俺なんかといないほうがお前のためだ」と言うので、もちろんそんな気はありませんが「じゃあ離婚したら息子たちはあなたが面倒みてね、私の新しい出逢いのハンディになるから」とカマをかけると小さく「…そうだな」と。
この会話から、主人は離婚について熟慮したわけではない、となんとなく思いました。そして主人が「みんなが集まった席で俺に電話して。俺から話すから。」と言いました。
後で調べて分かったことですが、一般に不倫相手に対して行動をおこした場合、その夫(妻)がその衝撃から慌てて離婚を切り出すことはよくあるそうです。それを真に受けて「売り言葉に買い言葉」で離婚への道をたどるケースもあるとか。
なるほど、日本に来る前に西田先生から忠告されたこと…「思いもよらない状況になることも十分考えられます。パニックにならないよう柔軟に対処していきましょう」の意味が今、よく分かりました。
相手女性との対決
約束の時間に少し遅れて不倫相手の女性が来ました。背筋をぴんと伸ばして・・・「こんな書類にサインするつもりはありません。あの人は私に『一緒になろう』と言ってくれました。そちらがそのつもりなら裁判でも何でもどうぞ。負けるつもりはありませんから。」
と完全な戦闘体勢。強い性格の人でした。私は「主人は私を愛してくれていますし、私と離婚するつもりはないと言っています。主人のことは忘れてください。もう会わないでください」と余裕の笑顔で言ってやりました。
彼女は「それはできません。」と言うので、私は「それではあなたに慰謝料を請求するなどの法的な手段をとらせていただきます。」と言いました。
これも後で西田先生から受けたアドバイスですが、「相手から裁判を申し立てられる可能性は低いと思います。相手方の方が圧倒的に不利な状況ですから、負ける裁判を喜んで引き受ける弁護士はほとんどいないと思いますよ」とのことです。
その場で主人に電話して全員が話しました。主人はここで結論は出さず曖昧な返事しかしなかったので、ことさら彼女のお母様から手厳しく説教されていました。
私が生きている意味
当日の私は、主人から言われた「清算しよう」の言葉ですべてが終わり、結局相手の女性に負けたような気がしてホテルに帰ってからは涙が止まらず、主人に電話して「あなたがいないと生きていけない。愛してる…」と大泣きしてしまいました。気が変になりそうでした。
泣きはらした翌朝、ホテルをチェックアウトしスーツケースを引きずるようにして向かった先は、主人が尊敬し慕っている主人の姉夫婦の家。もう私一人では耐え切れないと感じたので、彼らにだけ相談することにしました。主人にも電話してその旨を話すと「どうぞ」という冷たい返事。
夫妻は温かく迎えてくれ私の話を親身になって聞いてくれました。そして・・・「今回の行動は正しかった!そんな女のことで振り回されるのはばかばかしいよ。弟(主人)はつい先日も妻や子供のことをうれしそうに話していたから離婚する気なんてないと思う。
正妻はドーンと構えて居心地の良い家庭を保っていたらいい。最終手段として必要ならいつでも説得に当たるよ!」と言ってくれました。
ここで「私が生きている意味」は何か、はっきりした気がします。「人をバカにするのもいいかげんにしてよ!」とキレそうな気持ちになるときもあるけど、短気を起こして今の苦しさから逃れるためだけに離婚するのはよそう。
私は主人と一生を共にしたいし、息子たちの幸せを守りたい!義姉夫婦という強力な助っ人ができて、かなり気持ちが楽になりました。
「離婚届け不受理願い」を提出
翌朝、義姉と一緒に最寄りの市役所へ行き「離婚届け不受理願い」を提出しました。これは「万が一主人が勝手に離婚届を提出したとしても受理しないでください」というお願いで、日本全国どこの役所からでも提出でき、また海外から郵送することもできます。
半年間有効で、提出時の印鑑があれば離婚したくなったときに取り消しの申請も可能、というものです。こういう経緯があって私と顔を合わせたくなかったのでしょう、主人は私が帰宅した翌日に日本に発つよう、航空券を手配していました。このままの状態で日本に発たれては話し合うこともできません。
帰宅してから主人が発つまでの半日間が勝負と、私は主人に「留守番ありがとう」の贈り物を用意し、身なりをきれいにして、何事もなかったかのように満面の笑顔で他愛もない話に終始しました。
これに主人は戸惑い、またホッとした様子で、そのうちいつもどおりの笑顔が戻っていました。「あれ?離婚の話は…無くなったのかな?」とでも思ったのでしょう。
その流れで夜は夫婦生活を楽しみました。作戦成功です。そして翌日、笑顔で「いってらっしゃい!」。主人を送り出すと、日本でお世話になった人たちにお礼の手紙を書きました。相手の女性のお母様には電話でもお礼を言いました。電話によると、相手の女性は今回のことがきっかけでお母様やお姉さまと断絶状態だそうです。
このとき西田先生から「可能なら今はできる限りご主人から離れないほうがいい。一緒に日本に行くことはできませんか」「相手の女性がご主人に会えない状況が続けば、思い通りに会えない彼女は泣くかわめくかの状態になると思います。そうなったらこちらが有利です」とアドバイスがありました。
息子たちの学校があるとはいえ、緊急事態です。主人に電話で「私も日本に行ってあなたの仕事や身の回りの世話をしたい」とお願いしましたが「今来てもしょうがないでしょう。お金もかかるし。」と案の定断られました。これで押しかけていったら嫌がられるのが目に見えているので、まずは我慢して様子をみることにしました。
毎朝明るくモーニングコール
主人が日本に発つと、やはり不安が押し寄せてきました。今ごろ彼女と一緒にいるのかもしれない、彼女とはもっと楽しく長電話しているのかもしれない、「今度こそ一緒になろう」なんて話を楽しそうにしているかもしれない…。私はまた取り付かれたように主人の携帯に電話せずにはいられませんでした。
それが主人には煩わしかったらしく、迷惑そうに出てすぐに切りたがります。そんなときに西田先生からアドバイスがありました。「ご主人だって”何も求められず~してあげる”という妻のほうが一緒にいて楽だと思いますよ」そこで狂いそうな思いをぐっとこらえて、毎朝8時に1回だけ明るい声でモーニングコールをすることにしました。「電話に出てくれてありがとう」の言葉を添えて。
落ち着いて考えると、確かに今は以前のように携帯の電源が切られていることはなく、いつも仕事仲間と一緒に忙しくしていて外泊することもなく、彼女に会っているとは思えない状況です。
また西田先生に、私が主人に送ったメールの内容を見せたところ次のようなアドバイスをいただきました。
「『お願い』が多い、いわゆる”依存型の妻”になりすぎると、”おんぶにだっこ”と言いますか、相手の負担が大きくなり、不公平感を感じたりして、離婚につながりやすくなります。
表現は悪いと思いますが、昼は仕事について対等に話せる”有能な秘書的サポーター”、夜は”夫専門の娼婦”といった感じの妻を目指してはどうですか?自分に色んな意味でたくさんの利益を与えてくれる妻を手放す夫はほとんどいないと思いますよ。」折しも主人が新しい事業を始めたところなので、会社経営についての勉強を始め、不倫については一切触れず、泣き言を言わないように頑張ってみました。
「居心地の良い家庭づくり」で主人の心をつかもう
主人が日本から帰ってきました。何事もなかったように普通の生活が始まりました。彼女とのことはどうなったのか、これからどうしていこうと思っているのか…たずねたいことは喉につまっていますが、聞いても本当のことを話してくれるとは思えません。
これまでも尋ねるたびに「大丈夫だよ、愛してるよ」といった言葉でごまかしながら彼女とつきあってきた経緯があります。また険悪なムードになったらいつまた「離婚」を切り出されるか分かりません。
主人のほうから「彼女とは別れたよ」と言ってくれたらどんなにうれしいか…。その言葉を得るためには主人の心を私と家庭にしっかり向けさせることが必要です。
それならとことん知らん振りして「居心地の良い家庭づくり」に専念してみようと思いました。彼女のことには一切触れず、責めず、いつも笑顔でおいしい料理を作り、女性らしさを意識して身なりに気をつけ、夜の生活も積極的に工夫して楽しみ、バリバリ仕事もこなしました。
そうして2ヶ月、私が普通に楽しそうに暮らしているので主人は安心したらしく、携帯電話も無防備になりました。見ると毎日20回以上(それ以上は記録されないので本当の回数は不明)数分おきに相手の女性から電話が入るのを、受信音を消した状態で無視しつづけているのが分かりました。
電話料金の明細をみてもこちらから電話した形跡はありません。「これが彼の答えなのかも知れない」とうれしくなりました。お正月には「来年のお正月はみんなで日本に行こうか」と「将来の話」もしてくれました。
再び不倫相手との通話記録を見つけて…
主人から離婚を切り出された日から4ヶ月が過ぎました。結婚記念日・クリスマス・お正月と、ふたりきりの時間ができるたびに「今日こそいい言葉がもらえるかもしれない」と期待しましたが、主人からは何の言葉もありませんでした。
そんなクリスマスの翌日と元旦に1回ずつ、主人から相手の女性に電話した記録があるのをみつけてしまいました。「まただ…」手が震えました。その晩主人にたずねることにしました。
まずはこれまで彼女の電話を無視しつづけてくれたことに感謝し、「なぜ彼女に電話したのか」「私とは今後どうしようと思っているのか」を聞きました。
電話の理由は、昔彼女の仕事の事務所の移転のために主人が間に入って契約した内装業者との間にトラブルが持ち上がり、仕方なく間に入った主人がその処理をしなければならなくなったとのこと。
「それはいつまで続くの?」と聞くと「もうちょっと…。」と。「これ以上彼女と連絡をとるなら慰謝料を請求しようと思ってる。」と言うと、「大丈夫、お前が心配するようなことはないから。もう会ったりしていないから」と言います。
それからというもの、主人は警戒しているのでしょう、携帯に彼女からの受信記録は残らなくなりました。
夫も自分も大切にする生き方
「きっと私が動かないと解決できないんだ。相手の女性に慰謝料を請求しストーカー行為で告訴しよう」と思い、西田先生に相談しました。すると意外なアドバイスが返ってきました。
「ひょっとしたらご主人は、せっかく家庭がいい感じになってきたのに『まずいことになったなあ』と思い、家庭を壊さないよう精一杯の対応をしているのかもしれませんよ。『妻は自分の味方だ』と信じられるような状況を作ればきっと問題は乗り切れると思います。」
これまで頑張りすぎたのか・・・今の私は疲れて結論を急ぎたくなっているのかもしれません。馬鹿だと言う人もいるかもしれないけれど、これからも主人の心情を理解し、良いふうにとらえて「もうちょっとだから一緒に解決していこうね」という態度で接していけば、主人は戻ってきてくれる気がします。
「その前に自分が疲れてご主人を愛せなっても困ります。適当な距離をおいて相手も自分も愛せるようにしていきましょう。」
これが一番最近の西田先生の言葉です。