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相手方の性格に合った「慰謝料を払う動機」を用意する
”慰謝料請求ができること”と”慰謝料が認められること”は違います。自分の判断で「慰謝料の請求はできる!」と考えて請求するのは構いません。ただ、その請求を相手方が認めてくれるかどうかはまた別の話です。
相手方が自らの行為を反省して「君の請求通りに慰謝料を支払うよ」と言ってくれたら話は早いのですが、普通はそう簡単にいきません。
相手が支払いを認めるにはそれなりの根拠・理由が必要です。慰謝料を支払う人はどんな性格で、どんな動機で支払う可能性があるのか・・・そんな傾向が正しく理解できれば早期円満解決に近づくアプローチの方法が見えてくるはずです。
ここでは、慰謝料の支払いを決意する人の心理・動機・タイプ・傾向について具体的に検証していきます。
何よりも金銭的な負担を軽くしたいタイプ
慰謝料の請求をされて「金銭的な負担を軽くしたい」と思わない人はいません。ですから、提案された解決案が「金銭的にお得だ」と感じさせるような提案をすれば、誰でもある程度は耳を傾けると考えたらいいでしょう。
ただし、「金銭的な責任を逃れるためにどこまでやるか」という悪質性の程度は人によって相当違います。たとえば、責任を逃れるためなら「裁判でも平気で嘘をつける」という人もいれば、「そこまではできない」という人もいるでしょうから、それらの行動の違いによって展望も違ってきます。
また、「客観的な視点で冷静に先の展望を見通せる力」も人によって相当違いますので、これによって展望が変わってきます。
たとえば、裁判で平気で嘘をつける(悪質な)度胸を持った人でも、全体を見通す客観的な視点を持っていたら「証拠を取られているところで嘘をついても無駄だ」と判断し、妥当な線で示談がまとまったりもします。
このように、人の性格や能力にって予想する展望も相当違ってきますが、金銭的な損得勘定に執念を燃やす傾向がある以上、解決に金銭的なメリットが感じられる提案や説明がうまくできれば、示談成立の確率がアップすると思います。
具体的にいうと「裁判で争う場合」と「示談で解決する場合」の予想負担額を対比し、裁判等で争う方が負担が多いことを理解させることができれば解決しやすい、ということです。
なお、一番厄介なのは言うまでもなく、平気で嘘をつく性格の持ち主で、冷静かつ客観的に先の展望を見通せる力がない人物です。
このよう人は、何を言ってもまともな話にならないと思いますので、早い段階裁判での解決しかないと覚悟を決め、証拠の確保に力を注いだ方がいいでしょう。
「裁判になったら200万円程度はほぼ確実に取られそうだ・・・。裁判になれば弁護士費用も100万円くらい別にかかりそうだし・・・それなら今200万円で示談した方が得だな。よし、ここは200万円での示談に応じよう!」
何よりも精神的な負担から逃れたいタイプ
精神的に弱い人は、慰謝料を請求されただけでも、命でも取られるかのように怯えたり、大騒ぎする傾向があります。
このようなタイプの人は、恐怖に縛られた状態にあるので、目の前の問題から早く逃れたい一心で、高めの金額でも簡単に支払ってしまうような危うさを持っていたりもします。
このような恐怖心に満ちた相手方は、請求する側からすると、とてもやりやすい相手に思え、実際に早期円満解決に至ることも多いと思います。
しかし、相手方の恐怖心に付け込んで踏み込み過ぎると、反対に「窮鼠猫を咬む」という言葉のように、大きなしっぺ返しを食うことがあるので注意しなければなりません。
このタイプの人は、気持ちの浮き沈みが激しい人も多いので、一旦お金を払って問題を解決した場合でも、後から「お金を取られた」などと言ってトラブルを引き起こしかねません。
ですから、このタイプの人に慰謝料を請求する場合は、まず「安心させること」が大切です。怖がらせ過ぎると、協議を持ちかけても反応を示さなかったり、妥当な金額を提示しても必要以上に警戒したりして、こう着状態が続くこともあり、更には、こちらの何気ない言動を悪く受け取られたり、恨まれることもあります。
このようなことから、最初は「慰謝料を請求するけれど、過大なお金を請求するつもりは一切無いので安心してください。」などと言って落ち着かせるよう心掛けましょう。
「理由はどうであろうと、もうこれ以上争いたくない・・・。こんな争いを続けていたら精神的に持たない。慰謝料を払えと言うなら払うからもうこの問題から解放して!」
何よりも時間を節約したいと考えるタイプ
会社の経営者や役員のような、いわゆる「仕事のできるタイプの人」は、解決が長引くことによって失われる時間を最も気にします。
なぜなら、仕事のできる人は、自分の時間当たりの単価を意識していることが多いので「時間単価×失われる時間」という計算式から、大まかにでも損害額を簡単にはじき出してしまいます。
ですから、このようなタイプの人には、調停や裁判になった場合に要する時間、弁護士などの専門家と打ち合わせをする時間などを伝えると、あっという間に問題が片付いたりすることも結構あります。
このタイプは、金銭的な負担を軽くしたいタイプと同じようにも思えますが、これは「高いお金は払いたくない」という単純な理由だけではなく、「時間をお金で買う」という賢者特有の考え方からくるものです。
要するに「賢い人は凡人には見えない損害やリスクが見えるので、多少のお金は払っても無駄な争いはしない」ということです。
「こんな争いを続けていても時間の無駄だ!ある程度のお金を払って解決できるならさっさと払って終わりにしよう。」
何よりも秘密が外部に漏れることを恐れるタイプ
誰でも、慰謝料請求の原因となった不倫・セックスレス・暴力・ギャンブル・借金・親族問題などを他人に知られたくはないものですが、いざ離婚問題が発生してしまったら、普通の人は「ある程度は知られても仕方ない」とあきらめるところだと思います。
しかしこのタイプの人は「この事実が会社の人にバレたらどんな風に思われるだろう?」などと、他人の評価を必要以上に気にするので、他人に知られずに解決する方法を必死に探ります。
この傾向を逆手にとって「会社にバラされたくなかったら・・・」などと脅すのは良くないですが、裁判や強制執行の段階になると、様々な形で外部の人に事実関係がバレる可能性も出てくるのも確かですから、そのような不都合を回避するためにも早く解決しましょう、と持ちかけるくらいのことは、早期解決を望む双方にとってメリットのある会話だと思います。
「不倫の問題で裁判なんかになったら親族や会社からの信用ガタ落ちだ!とにかくお金で問題が解決できるなら何とか示談でまとめよう!」
何よりも「自分なりの正義」を重んじるタイプ
何よりも「自分なりの正義」を重んじるタイプの人は、慰謝料の金額より「自分の正義に照らしてどうか」という点を最も重視します。
このタイプの人は、基本的に真面目なので、卑怯な嘘を突く可能性は低いと考えて良いでしょう。ですから、不倫の証拠がなくても素直に事実を認めて責任を取る人も結構います。
この書くと、このタイプが一番やりやすそうにも思えますが、そう簡単なものばかりではありません。なぜなら、解決の展望はその個人の正義感によって大きく左右されてしまうからです。
たとえば、一般的にも法律的にも悪とされる不倫も、人によっては「心が妻の下にあれば、単なる遊びに過ぎない」と考えている人もいます。
道徳や法律に反していても、自分の中の正義に合致していれば、その人にとってはそれが正義なのです。このタイプの人を「真面目」と言えば聞こえはいいですが、言い方を変えれば「頑固」です。
考えてみれば、自分の考える正義を押し通されることほど厄介なことはありません。「正義感の強い真面目人間ほど扱いづらい」という側面もありますので、こういったタイプの人に慰謝料を請求する場合は、相手方の性格や傾向を踏まえ、適切な対応をするよう心掛けましょう。
「確かに相手方には申し訳ないことをした・・・。自分にも言いたいことはあるが、ここは素直に自分の非を認めて慰謝料を支払おう。」
まとめ
ここで挙げたタイプは一つの例ですが、慰謝料請求の具体的な事案の中ではどのパターンに近いかを予想して戦略を練っていく必要があるでしょう。
不誠実な人に誠実さを要求しても、時間の余裕のある人に「時間がもったいないわよ!」などと持ちかけても的外れです。
さらに言うならば、どんなに手を尽くしても慰謝料を認めさせるのが困難であったり、裁判で争っても勝てるだけの証拠や証人がないなら「あきらめる」というのも重要な決断です。
小事にこだわって、人生という大勝負に負けてしまってはなんにもなりません。「やるときはやる」というのも大事ですが、反対に「「引く時は引く」ということも同様に大切なことです。決断に迷ったときはいつでもご相談ください。