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養育費とは
養育費とは、子供が親から自立するまで養育してもらうための費用(監護養育に必要な費用)です。実際には、子供を引き取っている親が、もう一方の親から費用を分担してもらうという形で養育費は支払われています。
夫婦は離婚すれば他人になるわけですが、親と子供の関係はなんら変わるものではありません。上記のように養育費は、親であれば当然負担すべき費用なので、特に取り決めがなくても、たとえ経済的に困窮していても、自分自身が生活している以上、養育費の支払い義務は原則として発生します。
扶養の義務は、法的には「自分の生活を保持するのと同程度」の生活を被扶養者にも保持させる生活保持義務と、「自分の生活を犠牲にしない限度」で、被扶養者の最低限の生活扶助を行う生活扶助義務に大別されます。
養育費や婚姻費用(別居中の家族の生活費)の支払い義務は、「生活保持義務」の程度で認められるため、養育費には「自分の生活を保持するのと同程度の生活を被扶養者(子供)にも保持させる義務があることになります。
わかりやすくいうと、、養育費を支払う側の親(非監護親)に「余裕があったら支払うよ」と言ったような言いわけは許されず「 あなたが一切れのパンを食べて生きる権利があるなら子供だって同様の権利があるはずです。
たとえ一切れのパンでも一杯のおかゆでも、別れて暮らす子供に分け与えなさい。」という性格のものなのです。
養育費の減額・免除
一度決めた養育費の額は、後で変更できないのが原則ですが、当事者間に特別の事情が発生したときは、養育費の増額・減額・免除が認められることもあります。
養育費の減額・免除の具体例
養育費の取り決めは必ず公正証書に
当事者間で養育費の合意をした場合は、必ず法的な効力(強制執行力)のある公正証書にしておきましょう。養育費の合意をしても、養育費を支払う側の事情や気持ちに変化が生じて不払いになるケースが圧倒的に多いからです。
驚かれるかもしれませんが、厚生労働省の統計によると、養育費の支払いが滞る確率は68.1%とされています。考えようによっては「約束は68.1%の確率で破られる」と言っても過言ではないでしょう。
この確率はいわば「事故率」というわけですが、これだけ事故率の高い人が保険に入らない理由があるでしょうか。
少ない費用で大きな効果の得られる公正証書は将来入ってくるお金の保険です。養育費はもちろん、慰謝料や財産分与の「分割払い」の取り決めをする場合は、必ず公正証書にしておきましょう。
なお、当事者間で作成した契約書(私署証書)でも一定の効力は認められますが、後日不払いが生じたとしてもすぐには差押さえ等の強制執行はできません。
その契約書には執行力という法的効果がないため、改めてその契約書を証拠として裁判所に訴え判決を得る必要があるのです。
しかし、裁判には時間と費用がかかるので、そう簡単には判決を得ることはできません。そこで!一歩進んで契約書を作成する時には強制執行力のある公正証書にしておくのです。
そうすれば裁判をしなくても、すぐに給料等の差押え(給与の約50%)が可能になります。
万一の時に効果のある書面が本当に意味のある書面であり、その書面こそが公正証書なのです。この点をよく理解していただき、後日の紛争回避に是非お役立て下さい。
「養育費の金額は変更しない」という取り決め
「養育費の金額はどのような事情があろうと変更(増減)しない」という取り決めをしても、公正証書にすることは難しいでしょう。
公証人も「無効」とまでは言わないまでも、現実的には経済的事情等により、養育費を変更せざるを得ないケースもあるため「現実的に適当ではない」として公正証書にはしてくれないでしょう。
「養育費はいらない」という取り決め
養育費は子を引き取る親の権利ではなく子どもの権利です。従って、仮に養育する側の親が「養育費はいらない」と合意した場合でも、そのような合意は法律的にも無効なので、子供は成人するまでの間、養育費を請求することができます。
養育費は子どもから請求する性質の「扶養請求権」なので、監護者が放棄しても意味がないのです。子供の将来を親権に考えるなら、養育費は必ず請求してください。
養育費は子供名義の口座で受け取る
養育費を銀行振込等で受け取る場合は、子どもの口座での受け取りをお勧めします。子どもと離れて暮らす親の立場で考えると、子ども名義の口座に振り込む方が「子供のためにしている」という気持ちになりやすいからです。
継続的に養育費を受け取るためには、支払う側への配慮と感謝の気持ちが必要であることを忘れないでください。