養育費は子を引き取て育てる親の権利ではなく、子供自身の扶養請求権です。従って、父母が「養育費はいらない」と合意した場合でも、その合意は(父母の間では有効でも)子供との関係では無効と考えられるため、子供は成人するまでの間、養育費を請求することができます。(実際は、法定代理人である親が子供に代わって請求することになるでしょう。)
後に養育費を請求できるかどうかは、その他の事情によっても変わってきます。たとえば、子供と離れ離れになる夫が子供の将来を案じ、将来の養育費に相当する十分なお金を既に渡していたような場合は、その後の養育費の請求は難しいでしょう。なぜなら「夫は養育費を先払いしている」と考えることができるからです。
反対に、離婚を強く望む妻が、夫の「離婚して欲しいなら養育費は今後一切請求しないと約束しろ!」という脅しに屈して「今後一切請求しない」と合意した背景があるなら、その後の養育費は認められやすいでしょう。なぜなら、父母の個人的な感情や事情によって、物言えぬ子供が権利を失うようなことがあってはならないからです。
「この夫(または妻)とは今後一切関わりたくない」という思いが強い方は、その後の面倒な関わりから解放された一心でつい、「お金はいらないから今後一切関わらないで」などと約束してしまいがちです。
しかし、そこで一歩踏みとどまり「養育費は子供の権利」という点を改めてお考えください。
安易な養育費の放棄は子供のためにならないだけでなく、後のトラブルの火種にもなりかねません。
「養育費は請求しない」という合意の背景にあるのは、ほとんど親の勝手な事情です。子供を引き取る多くの親の心情は「子供を会わせたくないから養育費も請求しない」ですが、反対に、子供と離れて暮らす親の心情は「子供と会わせてもらえないなら払わない」です。
このような心情も仕方ない側面はあるとしても「仕方ない」と済ませて本当に良い問題でしょうか?誰の子供でもない、皆さん自身の子供のお金です。迷った時はご相談ください。