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協議離婚とは

協議離婚とは、当事者の話合いによって離婚することです。離婚する100組の夫婦のうち、90組は協議離婚、9組は調停離婚、残り1組は裁判離婚(判決離婚)というのがわが国の離婚の実態です。近年離婚件数及び離婚率の増加等が話題になっておりますが、実はこの離婚方法の90:9:1という割合には殆ど変化がありません。

離婚手続における最重要課題は”議離婚をいかに上手に進めるか”ということです。離婚の手続きにおいては、調停前置主義(家事審判法第18条)という、離婚裁判をする前には必ず調停を申し立てなければならない決まりがあるので、いきなり裁判が行われることはありません。

協議離婚の流れ

協議離婚は一般的に次のような流れで行われます。

  1. 話し合い(協議)
  2. 離婚の合意
  3. 離婚協議書の作成
  4. 離婚届の作成
  5. 離婚届を市区町村役場に提出(受理)
協議離婚の特徴

 協議離婚には以下のような特徴があります。

  • 裁判所は関与しない
  • 離婚の合意が必要
  • 離婚に一定の理由はいらない
  • 話し合いの日時・場所・方法を、関係者の都合で自由に決められる。
  • 離婚届の提出に費用はかからない
  • 第三者に知られずに手続きが進められる

離婚の届出

離婚届には夫婦および成年の証人二人以上が署名しなければなりません。離婚届の用紙は、市区町村役場に備えてあります。離婚届の提出先・提出方法は以下のとおりです。

離婚届の提出先

離婚届は次のいずれかに提出します。

  • 本籍地の市区町村役場
  • 夫婦の所在地の市区町村役場
    所在地とは届出当時の住所・居所・一時的滞在地のことを指します。夫と妻が別居しているときは、それぞれの所在地の役所に届出することが可能です。
提出方法
  • 代理人による届出
    届出は他人に委託することもできますが、頼まれた者が役場に持参する前に本人が死亡すると離婚の効力が生じません。
  • 郵送による届出
    届出は郵送することもできますが、ポストに投函した直後に本人が死亡した場合でも届出は受理され、離婚した後に死亡したものと扱われますので、相続関係に微妙かつ重大な利害関係が生じることとなります。
離婚届の注意点

離婚届を提出する場合は、以下の点に注意しましょう「。

  • 親権者を決める
    未成年の子がいる場合は、離婚後の親権者を決めておかなければなりません。複数の子の親権者を夫婦の一方に定めることもできますし、一人は夫、一人は妻と別々に定めても構いません。しかし、夫婦が共同の親権者になることは許されていません。どちらが親権者になるのか決まらないと離婚届は受理されず、結局協議離婚はできないことになります。
  • 結婚前の氏に戻る者の本籍を決める
    元の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを決めます。
  • 夫と妻が署名押印をする
    自分で氏名を書き、自分の印を押してください。(代署は許されません)印は実印でなくても構いません。
  • 証人が署名押印をする
    離婚届の証人は「成人であること」「二人以上必要であること」だけが条件です。証人の資格に何ら制限はありません

離婚届の不受理申出

もしあなたが「断じて離婚に応じない」というのであれば、(勝手に離婚届を提出される虞がない場合は別として)その防衛手段として「離婚届の不受理申出」を行って下さい。これは、一方が勝手に離婚届を提出しそうな場合に、本籍地の役場に申出をしておくと全国どこの役場でも離婚届は受理されなくなるという制度です。離婚届の不受理届は、一度提出すると、本人が取り下げるまで有効です。

勝手に離婚届を出したら「公正証書原本不実記載罪」

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夫婦の一方に離婚の意思がないにもかかわらず、他方配偶者が勝手に離婚届を提出した場合、離婚は無効です。(民法第742条)署名と印鑑を勝手に使い、離婚届を作成し、使用する行為は、私文書偽造(刑法第159条条1項)及び偽造私文書行使罪(刑法第161条1項)という罪になるばかりか、役所に虚偽の届けを出し、戸籍に虚偽の事実を記載させたことで、公正証書原本不実記載罪(刑法第157条1項)という、とても重い犯罪です。

相手側が、後日その離婚届を提出した行為を認めれば(追認)、離婚届の提出時に遡って離婚は有効と扱われますが、離婚を認めてもらえない場合はちょっと厄介。 相手側から刑事告訴されるかもしれません。安易に行動すると取り返しがつなかくなる虞もありますので間違っても、勝手に離婚届を提出しないようご注意下さい。

勝手に離婚届を出されたらどうする?

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今度は逆に離婚届を提出された側の立場で考えてみましょう。離婚届けはたとえ無効でも、一旦戸籍に離婚の記載がされると、簡単には修正できません。離婚の記載を抹消して戸籍を訂正するには裁判所で離婚無効の調停をして、離婚が無効であることを認めてもらう必要があります。

では、離婚届を勝手に出された方が、刑事告訴や調停の申し立てをするのかというと、実際そのような告訴、申立てを行うケースは少ないようです。二人にとって重大な問題である筈の離婚届を勝手に提出したということは、既に話し合い自体を拒否していることが推測され、今後の修復が困難なことは誰の目にも明らか・・・。するとやっぱり、「そんな状態で離婚届けを無効にする意味があるの?」と、皆諦めがちになってしまうようですね。

結局「提出してしまった以上仕方ないか…」と渋々離婚を追認する形となり、後は慰謝料、財産分与、養育費…と具体的な離婚手続きに入っていくわけです。やはり、精神的に疲れきった状態で離婚の無効を争うことは、体力的にも、そして精神的にも厳しいようです。

配偶者が行方不明で協議ができない場合の離婚手続き

配偶者が行方不明で協議や調停ができない場合は、以下の根拠に基づいて離婚の訴訟を提起し、離婚を成立させていくことになります。

離婚の根拠
  1. 悪意の遺棄(民法770条1項2号)
    悪意の遺棄を理由として離婚を求める場合は、相手方の悪意を立証する必要がありますが、行方不明の期間は問題になりません(行方不明から3年未満でも離婚請求が可能です。)
  2. 3年以上の生死不明(民法770条1項3号)
    行方不明の原因などは問題になりませんが、客観的に全く行方の分からない事が必要であり、かつ3年以上行方不明であることが必要です。ちなみに、3年以上の生死不明を離婚原因とする場合は、調停での対話は不可能なので、離婚調停を経ずに離婚の訴訟が提起できます。
  3. 失踪宣告(民法第30条)
    原則として7年以上生死不明であることを要します(ただし,戦争,船舶の沈没その他の危難により行方不明になった場合は1年)。この場合は離婚ではなく相手が死亡したものとみなされるので,配偶者の遺産を相続したい場合などには有効です。ただし、失踪宣告の場合は後日失踪者が生存していたことがわかると、宣告が取り消され、トラブルになる可能性もあります。

重婚の虞がある失踪宣告

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失踪宣告を理由として離婚が認められた後、失踪者の生存が判明して失踪宣告が取り消されると前の結婚は復活します。この場合、もし失踪宣告の後に再婚をしていたら、失踪宣告の取消によって復活した結婚と重婚状態になる問題があります。

これに対し、悪意の遺棄や3年以上の生死不明で離婚が確定した場合は、後で相手の生存が判明しても前の結婚は復活しません。ゆえに、重婚のリスクはありません。この点を踏まえると、後に重婚のリスクを避けたい場合は、悪意の遺棄か3年以上の生死不明を理由として婚姻を解消した方が良いかもしれません。