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慰謝料の取り決めをする場合は、できるだけ契約書を作成しておいた方が良いでしょう。なぜなら、たとえ慰謝料が即金で支払われて問題が終結する場合でも、紛争再燃の可能性が十分にあるからです。

たとえば、①事実関係②解決方法③解決後のこと、などを取り決めた書面を残していなければ、慰謝料を受け取る側も支払う側も一定のリスクを負うことになります。

当事者は普通”これで問題を終わりにしたい”と思っているはずですが、①の”事実関係”を書面化しておかなければ、慰謝料の決済後でも紛争勃発の可能性があります。

たとえば、不倫の慰謝料を100万円と合意して決済が終了した場合です。100万円で合意した理由が「不貞行為があったのは1回だけだったから」という場合、後になって不貞行為が多数あったと判明したらどうなるでしょう。

慰謝料の請求者(権利者)は「100万円で合意したのは不貞は1回だけという相手の言葉を信じたからだ!騙しやがって!」と怒って、改めて不足の慰謝料を請求するでしょう。

しかし、請求者側が発行した100万円の領収書の摘要欄に「不倫の慰謝料として」という記載しかなかったら、不貞行為1回に対する慰謝料だったのか、それとも複数回に対する慰謝料だったのか、という点で争いになる可能性があります。

次に、②の「解決方法」を契約書にする必要性についてです。たとえば、慰謝料の支払いについて合意する場合、具体的な金額・期限・支払方法・支払いを怠った場合の措置などを明確にしておかなければ、お互いに無用なトラブルに巻き込まれる可能性が出てきます。

権利者の側に立てば、たとえば義務者が後になって「慰謝料の約束した覚えはない」「金額はもっと低かったはずだ」「分割払いだったはずだ」などと言いだした場合は、合意内容を明らかにする公正証書等の契約書でもない限り、権利者は強制執行等の法的措置を取ることができません。

また、義務者の側も契約書を作らないことによるリスクはあります。たとえば、当初の話し合いでは「慰謝料は分割払いで構わない」という約束をしていたにもかかわらず、権利者側から「分割払いなど認めてない。一括で支払え!」などと言われたら、また紛争に巻き込まれてしまいます。

このように、具体的な解決方法の書面化は、当事者双方にとってリスク回避の大切な行為なので慎重に対応していきましょう。 最後に③の「解決後のこと」は、慰謝料の取り決めをした後のことです。

たとえば、不倫の相手方に対して「今後は自分の妻に2度と会うな。会ったり、電話やメールをした場合は慰謝料○○万円を支払わせるぞ」といった、紛争の予防的な取り決めもあるでしょうし、「お互い今後一切関わらない。」などの日常生活の平穏を願っての取り決めもあるでしょう。

このように、慰謝料の取り決めを契約書にしておかなければ、お互い様々なリスクを抱える可能性がありますので、面倒でも取り決めはできるだけ書面化しておくようにしましょう。

書面に何を記載するかを検討する必要がありますが、個々のケースごとに事情が異なりますので、詳しくは専門家に相談して確認しましょう。