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財産分与が分割払いになる場合

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財産分与や慰謝料の清算は、離婚時の一括清算が望ましいといえます。しかし、実際には相手方の支払能力から分割払いに応じざるを得なかったり、不動産を売却しないとお金の用意ができなかったりして、支払いが離婚後に残る場合が出てきます。

調停や裁判で決まった条件なら、調停調書や判決に基づいて強制執行できますが、協議離婚の場合に支払いが後に残るような条件の場合は注意しなければなりません。

口約束だけ信用できないのはもちろんのことですが、たとえ二人の間で契約書を作っていても、直ちに強制執行をすることはできません。

なぜなら、二人で作った契約書は”当事者本人が間違いなく契約をした”といえるほどの絶対的な証拠力までは無いからです。

ですから、私文書の強制執行をする場合は一旦「契約書の約定を履行せよ」という裁判を起こして判決を得なければなりません。

本人が直筆で署名捺印した契約書があれば、契約書の真正が認められることはほぼ間違いないとは思いますが、その判決を得るまでの手間はどうしても避けられません。

相手方が契約をした事実を素直に認めれば早期に解決できると思いますが、「そんな契約をした覚えは無い」などと言われようものなら、証人の証言の準備や筆跡鑑定などのために、相当の手間と費用と時間を要することになります。

そのような面倒を避けられるのが公正証書です。公正証書なら「公証人の前で契約したこと」に関する信頼性があるので、債務者が金銭の支払いを怠ったら直ちに強制執行できます。

金銭債務が分割払いには必ず「不払い」というリスクがありますので、万が一に備え、即座に強制執行ができる公正証書を作成するようにしましょう。

分割払いにすべきかどうかの判断

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財産分与や慰謝料は原則「一括払い」ですが、当事者が合意すれば分割払いにすることができます。財産分与は本来「現にある資産の清算」なので、分割払いということはあり得ないように思われます。

しかし「夫が不動産を承継する代わりに、妻に一定額の代償金を財産分与を支払う」といったケースでは、妻が代償金を払えるだけの保有資金がなければ清算はできませんので、分割払いにしなければならなくなります。

清算がすぐに終結しないデメリットはありますが、支払ってもらう総額の観点から考えると「大きな金額でも分割なら支払いに応じてもらいやすい」というメリットがあることも確かです。

ただ、あまりに長い期間にわたる分割払いは、途中で相手に支払う意思がなくなったり、事情が変わって支払えなくなったりすることも多いので避けるべきです。

離婚後、夫が再婚して新しい妻に子どもができたりすると、よくこうした問題が起きます。離婚後の誠実な履行が期待できないような場合には多少総額の点で低くなっても、一括払いを選ぶべきでしょう。

財産の清算は離婚前にしておかないと後で厄介なことに・・・

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財産分与や慰謝料を最も確実に支払ってもらう方法は、支払ってもらうまで離婚しないことです。例えば、相手方が早く離婚したがっている場合は、「離婚届にサインしないこと」が重要なポイントとなりますので「~をしてくれないと離婚しない」と明確に告げた方がいいでしょう。

とはいえ「夫婦喧嘩の勢いで何も取り決めずに離婚しましたが、今から慰謝料や財産分与は請求できませんか」がという相談はよくあります。

結論から言えば、財産分与は離婚後2年以内、慰謝料は3年以内は請求できます。ただし、一旦離婚が成立すると、その後の財産分与や慰謝料の請求は以前より進みにくいと言えるでしょう。

なぜなら、請求を受ける側とすれば、一旦離婚が成立すると「離婚するために財産分与や慰謝料の問題を片づけよう」という動機を失うからです。

考えてみれば単純なことです。財産分与や慰謝料の請求を受ける側にとっては、自分のお金が少なくなるような手続きですから、なるべくしたく避けたいと思っているわけです。

もっと言えば「2~3年放置して時効にできたら・・・」というのが「請求を受ける側のよくある本音」といったところです。

このようにして協議が進まないと、調停や審判等の手続きに進むわけですが、このような展開は決してお互いのためにはなるものではありません。

厄介な問題は後回しにしたい気持ちは分かりますが、明確な取り決めをしないまま中途半端な形で離婚を成立させると、後が大変です。

財産分与や慰謝料の問題は、なるべく離婚の際に解決するよう心掛けましょう。