金銭的束縛による精神的虐待
配偶者の一方が、正当な理由もなく、他方の配偶者に(生活費や小遣いなどの)お金を使う権限を与えなかったり、財産の存在や動きを教えないことがありますが、これは「金銭を通じての精神的虐待」と考えられます。
このような虐待は、広義では”同居関係にある配偶者との間で起こる家庭内暴力”を意味するドメスティックバイオレンスと言い、狭義では「精神的な暴力や嫌がらせ」を意味するモラルハラスメントと言われたりもしますが、ここではモラルハラスメント(以下「モラハラ」という)という用語でお話しします。
まず、モラハラの加害者は、配偶者を支配するために、配偶者の様々な権利を認めなかったり奪おうとします。
加害者は「お前はお金を管理する能力が無いから任せられない」などと、正当な理由があるかのように言い、配偶者のお金を使う自由や権利を奪おうとします。
この時、被害者自身が被害の自覚を持てたらいいのですが「自分に落ち度や原因があるのだから仕方ない」と、自分の原因があると思討事が多いため、問題が表面化しづらい側面があります。
しかし、支配と従属という不健全な夫婦関係は、これを取り巻く社会としても放置すべき問題ではありません。もし目の前の問題が深刻なモラハラであった場合、決断力や行動力を失った被害者だけで本質的な問題の解決を図るのは非常に困難といえます。
問題の解決には、被害者自身が問題のある現状を理解することも大切ですが、同時に被害者の周りの人間が事態の改善に向けて支援をすることも重要です。
ただし、離婚を視野に入れて解決すべきモラハラ問題かどうかの検討は慎重に行いましょう。こういった問題の解決に慣れていないと、配偶者の一方から「生活費を渡してくれない」という話を聞いただけで、DVだのモラルハラスメントだのと大騒ぎしてしまいがちです。
しかし、いざ相手から詳しい事情を聞くと「今までに相当の浪費が重なったから仕方なく制限しただけだ」などと、相当の理由が判明することはよくあります。
そして、こういった思い込みや偏見に基づく誤った判断は、肩書(弁護士・司法書士・行政書士・警察・裁判所の調停員等)のある人でも十分にあり得ますので、他人に相談する場合は、現実的な解決に導いてくれそうな能力と誠実さを持つ人を選ぶようにしましょう。