配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない

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精神病の配偶者を放置したままの離婚請求は認められにくい

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配偶者が強度の精神疾患におかされ、回復する見込みがなく、夫婦生活の本質的な義務が果たせない状態になった時は離婚の訴えが提起できると民法770条1項4号は規定しています。

ただし、この規定に基づき離婚が認められるケースは実際のところごくわずかです。なぜなら、裁判所はよほどのことがない限り、配偶者の精神病を原因としての離婚を認ない傾向にあるからです。

”強度の精神病にかかった”という事実に関しては、精神病にかかった者を責めにくいところもありますし、そもそも夫婦はお互いに協力して扶助しなければならない義務を負っていますから、配偶者が強度の精神病にかかったような場合は、なおさら夫婦は助け合うべきとも考えられます。

こうしたことから「法定離婚原因の中に強度の精神病を含めるべきではない」という意見も多く、実際に民法770条第1項第4号を原因として離婚が認められるためには、精神病にかかった配偶者の看護など、先行きの見通しが立つ状態であることを要します。

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強度の精神病に該当するかどうかの判断基準はどこにある?

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強度の精神病に該当するかどうかは、医師の診断書を参考にして裁判官が判断することになります。

裁判官が判断する際、決め手になるのは、夫婦としての精神的なつながりがなくなり、正常な結婚生活の継続を期待できない程度の重い精神的障害かどうか、という点です。

医学的に回復不能と判断された場合に限られるものではありません。

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強度の精神病とは

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離婚原因として認められる「強度の精神病」とは、そううつ病、初老期精神病、偏執病、早期性痴呆、麻痺性痴呆などの病気を指します。

離婚事由としての強度の精神病に当たるかどうかは、精神病の療養状態、回復の見込み、生活状態、経済的困窮、様々な状況を考慮する必要があります。

従って、精神病にかかったという事実のみをもって、直ちに離婚が認められるわけではありません。

実際に離婚が認められるためには、離婚後の生活面のこと、治療及び治療費の問題などが具体的に決まっている必要があります。

離婚原因として認められない精神病に属するもの
アルツハイマー・アルコール・薬物・劇物中毒・ヒステリー・ノイローゼなど
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離婚が認められた事例

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夫が「脳腫瘍のため植物状態に陥った妻と離婚をしたい」として訴訟を起こした事案に対し、横浜地裁は以下の事情を考慮した上で、”離婚をしても妻の身に特段の不利益を課すことはない”として、婚姻関係の破綻を理由に、離婚を認めました。(平成5年12月21日横浜地裁横須賀支部判決)

  • 妻が植物的な状態となってから約4年が経過している
  • 今後婚姻関係の実体を取り戻す見込みがない
  • 夫が妻の離婚後の生活や療養看護について妻の実母と契約を結んで、妻を過酷な状態に置かない配慮をしている
  • 子供達の養育についても、年齢・意向などの諸点から見て不都合はない

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離婚が認められなかった事例

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妻が脊髄小脳変性症という難病に罹患し、病院に長期入院したため、夫が離婚請求をした事案に関し、最高裁判所は以下のような判断から離婚を認めませんでした。

「民法770条1項4号の離婚原因があっても、相手方の離婚後における介護、療養の具体的な方策が講じられ、前途にその方途の見込みがついた場合でなければ民法770条2項を理由に離婚を認めることはできない」(最高裁判所昭和33年7月25日)。

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