悪意の遺棄(離婚原因 その1)

悪意の遺棄とは

悪意の遺棄とは、簡単言うと配偶者や家族を”ほっておくこと”です。夫婦は一緒に暮らし(同居義務)、家計を共通にし(扶助義務)、助け合って家庭を維持する(努力義務)という義務(民法752条)を負っていますが、これに違反した場合に悪意の遺棄に当たることになります。(民法770条1項2号)

悪意の遺棄に当たるかどうかを考えるに当たっては、総合的な判断が必要となります。たとえば、悪意の遺棄にみえる行為があったとしても、それが正当な理由に基づくものであれば離婚原因としての悪意の遺棄に当たりません。悪意の遺棄かどうかを考える上では表面的なものばかりにとらわないようご注意ください。

悪意とは

遺棄すれば婚姻生活が存続できないことを知っていながらこれを容認すること。

遺棄とは

正当な理由もなく同居、協力、扶助の義務を怠ること。遺棄というためには、一定の期間遺棄が継続して現在に至っている必要があります。(※なお、別居期間5年の経過により離婚を認めた判例があります)

悪意の遺棄に当たる行為

  1. 同居はしているが生活費は渡さない
  2. 妻の帰宅を拒む。(妨害する)
  3. 仕事をしない
  4. 理由もなく同居を拒否する(家を出ていく)
  5. 生活費を送る約束で別居したのに生活費を渡さない。
  6. 浮気相手の所に入り浸って帰宅しない。
  7. 生活費は送ってくるが他の女性と同棲している。
  8. 夫が妻を虐待して追い出したり、家を出ざるを得ないようにしむける
  9. 姑との折り合いが悪く実家に帰ったままである
  10. 健康な夫が働こうとしない
  11. 単身赴任の夫が妻子に生活費を送金しない
  12. 専業主婦が家事を放棄した場合
  13. 夫婦共働きで、拘束時間が対等なのに夫が家事に協力しない場合

悪意の遺棄に当たらない行為

  1. 単身赴任で別居する場合
  2. 夫の暴力や浮気に耐えかねて妻が家を出る場合
  3. 仕事の関係で1週間、出張していた
    (相当期間継続した遺棄とはいえない)
  4. 仕事上の出張、転勤による単身赴任による別居
  5. 夫婦関係を調整するための別居(冷却期間を置くための別居)
  6. 子どもの教育上、必要と判断した上での別居
  7. 病気治療のための別居
  8. 夫の不貞が原因で妻が一時家を出た場合
  9. 夫婦関係が破綻した後の別居
    ※夫婦関係破綻後の別居は破綻の結果であって、破綻の原因ではない

悪意の遺棄に関する重要判例

◎妻が婚姻関係の破綻について主たる責任を負い、夫からの扶助を受けないようになったのも自ら招いたものである場合においては、夫が妻と同居を拒みこれを扶助しないとしても、悪意の遺棄にあたらない。(最判昭39・9・17)