
財産開示手続は,勝訴判決等を得てもその実現を図ることが困難である現在の制度の問題点を認識し,権利実現の実効性を確保する見地から,債権者が債務者の財産を把握するための方策として民事執行法の中に創設され,平成16年4月1日に施行されることになりました。
これに伴い,財産開示手続を申し立てる場合は,以下の点に注意してください。
債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所(民事訴訟法4条)が,執行裁判所として管轄します(民事執行法196条)。また,この管轄は専属管轄とされています(民事執行法19条)。
したがって,債務者の現在の住所地を管轄する地方裁判所に申立てをすることになり,例えば東京都の23区及び島しょ部に住んでいる債務者については,東京地方裁判所民事執行センターに申立てをすることになります。
債務者が判決等に記載の住所から移転している場合は,住民票,戸籍の附票等でそのつながりを証明する必要があります。
財産開示手続は,債務者が財産開示期日に出頭し,宣誓の上で財産を開示する手続ですので,債務者の住所,居所その他送達をすべき場所が分からない場合は,この手続を利用することはできない(民訴法110条から113条までの公示送達の規定は適用されません。)と考えられています。
2,000円(民訴費用法3条別表第1の11の2イ)
同一の債権者が複数の債務名義に基づいて申立てをする場合も1個の申立てとなります。 債権者が数名の場合は,数個の申立てとなるため,人数分の申立手数料が必要となります。
同一の債務名義に複数の債務者が記載されている場合も,財産開示手続の性質上,債務者ごとに別事件として申立てをすることが必要となります。
8,400円(500円12枚,100円・80円・50円・10円各10枚)
(1)執行力のある債務名義の正本を有する債権者(民事執行法197条1項)
執行力のある債務名義の正本(仮執行宣言付判決,仮執行宣言付支払督促,確定した支払督促,執行証書(公正証書)を除く。)を有する金銭債権の債権者
(主な債務名義の例)
判決正本,手形判決正本,※少額訴訟判決正本,※家事審判正本,和解調書正本,民事調停調書正本,△家事調停調書正本,訴訟費用額確定処分正本
執行文の付与が必要です。
ただし,※印は執行文は不要,△印は内容により執行文が不要となりますが,承継及び条件成就の場合は,必ず執行文が必要となります。 判決正本,手形判決正本及び少額訴訟判決正本が仮執行宣言付の場合並びに家事審判正本の場合は,確定証明書の添付が必要となります。
債務者の財産について一般の先取特権を有する債権者(民法306条参照)
(1) 執行力のある債務名義の正本を有する債権者(民事執行法197条1項)
(a)債務者に当該債務名義の正本又は謄本が送達されていること(民事執行法29条前段),
(b)条件成就執行文又は承継執行文が付与された場合は,同執行文の謄本及び証明文書の謄本が送達されていること(民事執行法29条後段),
(c)請求が確定期限の到来に係る場合は,その期限が到来していること(民事執行法30条1項)等の執行開始要件を備えていることは,通常の強制執行の場合と同様です。
債務者について,破産宣告,会社更生手続開始決定,民事再生手続開始決定,会社整理手続開始決定及び特別清算手続開始決定がなされている場合は,強制執行を開始することができないので,財産開示手続も実施することができません。
債務者の財産について一般の先取特権を有する債権者であること(民法306条参照)。
【案内】雇用関係の先取特権の存在について,申立人が証明すべき事実及び一般的な証明文書
次のa.又はb.に該当することを主張,立証する必要があります。 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より6箇月以上前に終了したものを除く。)において,申立人が金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったこと(民事執行法197条1項1号及び2項1号)。
6箇月以内に実施された動産,不動産若しくは債権に対する強制執行又は担保権の実行における配当若しくは弁済金の交付において,申立人が金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得ることができなかったことを主張し,配当表又は弁済金交付計算書の謄本,開始決定正本又は差押命令正本,配当期日呼出状等の提出を要します。
(注) 配当表又は弁済金交付計算書の謄本からだけでは,財産開示手続における債務者に対するものか判断できないので,債務者の氏名,住所の記載のある開始決定正本又は差押命令正本,配当期日呼出状等の提出が必要になります。
知れている財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても,申立人が当該金銭債権(被担保債権)の完全な弁済を得られないこと(民事執行法197条1項2号及び2項2号)。
申立人が,債権者として通常行うべき調査を行った結果,知れている財産がどれだけ存在するのか,そしてそれらの財産に対する強制執行(担保権の実行)を実施しても,請求債権の完全な弁済を得られないことを主張し,その疎明として次の資料の提出を要します。
居住地,所在地(本店,支店)等の不動産を調査したが,これを所有していないことあるいは所有していても無剰余であること。 (資料)不動産登記事項証明書(全部事項証明書),ブルーマップの写し,調査結果報告書
法人,個人事業者:営業内容から通常予想される債権について調査したが,完全な弁済を得られる財産が判明しなかったこと。
個人:勤務先を調査したが不明であること,給料等のみでは完全な弁済を得られないこと。
(資料)商業登記事項証明書,調査結果報告書,第三者の陳述書・聴取書
価値がないこと。 (資料)調査結果報告書
債務者が申立ての日前3年以内に財産開示期日においてその財産を開示した者でないこと(一部の財産を開示しなかったとき等を含む。)(民事執行法197条3項)。本要件は,申立ての段階においては,明示的な主張立証を要しないと考えています。
ただし,過去3年内に全部の財産を開示したことが実施決定前に裁判所に明らかになった場合には,申立人は,一部の財産の非開示(1号),新たな財産の取得(2号)又は雇用関係の終了(3号)の要件を立証する必要があり,その立証がなければ申立ては却下されます。
(a) 財産開示手続申立書(頭書)
【書式】財産開示手続申立書(PDF)
(b) 当事者目録
【書式】当事者目録(PDF)
(c) 請求債権目録
【書式】請求債権目録(PDF)
(d) 財産調査結果報告書
【書式】財産調査結果報告書(個人用・法人用)(PDF)
(a) 財産開示手続申立書(頭書)
【書式】財産開示手続申立書(PDF)
(b) 当事者目録
【書式】当事者目録(PDF)
(c) 担保権・被担保債権・請求債権目録
【記載例】担保権・被担保債権・請求債権目録(PDF)
(d) 財産調査結果報告書
【書式】財産調査結果報告書(個人用・法人用)(PDF)
(注) 本件申立ては,債務者ごとに別事件として申し立てる必要があります。
申立てを理由付ける事実を具体的に記載し,かつ,立証を要する事由ごとに証拠を記載しなければなりません(民事執行規則182条2項,27条の2第2項)。
(2) 当事者目録
当事者の氏名又は名称及び住所,代理人の氏名及び住所を記載してください(民事執行規則182条1項)。 債務名義上の氏名又は名称及び住所について更正決定があるときは,その正本及び債務者に対する送達証明書を提出してください。
債務名義上の氏名又は名称及び住所について,変更又は移転がある場合は,当事者目録に,変更又は移転後の氏名又は名称及び住所を記載し,債務名義上の氏名又は名称及び住所も併記してください。
この場合は,つながりを証する住民票,戸籍謄本,商業登記事項証明書等の公文書を添付する必要があります。 目録については,写しを4部提出してください。
債務名義を,裁判所名,事件番号及び債務名義の種類で特定し,請求債権額を記載してください。 付帯請求(遅延損害金)については,申立日までに発生したものに限定する必要はありません。 目録については,(2)Dと同様です。
担保権を特定し,その担保権によって担保される債権額等を記載してください。付帯請求(遅延損害金)については,(3)Bと同様です。 目録については,(2)Dと同様です。
商業登記事項証明書,代表者事項証明書等(申立人は2箇月以内,債務者は1箇月以内に発行されたもの)
弁護士:委任状
許可代理人:代理人許可申立書,委任状,代理人と本人との関係を証する書面(社員証明書等)
債務名義上の氏名又は名称及び住所について,変更又は移転がある場合
住民票,戸籍の附票,履歴事項証明書,閉鎖商業登記事項証明書等
●一般の先取特権を有することの証明文書
雇用関係の先取特権の存在にかかる証明文書は,原本及びその写し2通を裁判所に提出してください。写しのうち1通は,債務者へ財産開示手続の実施決定正本とともに送達します(民事執行法197条4項)。
【案内】雇用関係の先取特権の存在について,申立人が証明すべき事実及び一般的な証明文書
(1) 実施決定が確定したら,1箇月ほど後の日が財産開示期日として指定されます。財産開示期日の約10日前の日が債務者の財産目録提出期限と指定されます。
(2) 提出された財産目録は,民事執行法201条に掲げられた者に限り,財産開示期日前においても閲覧することができます。
(3) 開示義務者が財産目録を提出した後は,債務者の同意がない限り,財産開示手続申立事件を取り下げることはできません(民事執行法20条,民事訴訟法261条2項)。
(4) 申立人(申立人が法人の場合は代表者),同代理人弁護士,同許可代理人は,財産開示期日に出頭し,執行裁判所の許可を得て,開示義務者に対し質問することができます(民事執行法199条4項)が,根拠のない探索的な質問や債務者を困惑させる質問は許可されません。
なお,財産開示期日の円滑な実施のため,質問がある場合は,事前に質問書を提出してください。
(5) 執行力のある債務名義の正本及び同送達証明書は,財産開示手続申立事件が終了するまで還付されません。
(6) 開示義務者が財産開示期日に出頭しなかった場合,財産開示手続は終了します。
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