離婚に関する民法重要条文・判例一覧

 
 

民法第703条〔不当利得の要件と効果〕

法律上の原因なくして他人の財産又は労務に因り利益を受け之か為めに他人に損失を及ほしたる者は其利益の存する限度に於て之を返還する義務を負ふ

判例

◎婚約が解除されて婚姻が成立するに至らないときは、結納を返還しなければならない。(大判大6・2・28民録23-292)

◎法律上の原因とは、正義公平の観念上、正当とせられる原因のことである。(大判昭11・1・17民集15-101)

◎内縁の夫婦がその共有する不動産を居住または共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される。(最判平10・2・26) 
 


 

民法第708条〔不法原因給付〕

不法の原因の為め給付を為したる者は其給付したるものの返還を請求することを得す 但不法の原因か受益者に付てのみ存したるときは此限に在らす

判例

不法の原因

◎本条の不法原因とは、原因行為が公序良俗に反する事項を目的とする場合をいい、法律の規定に反する場合をすべて含むものではない。(大判明41・5・9)

◎給付が不法原因に基づく以上、不法が受益者にのみ存する場合の他は、当事者が不法であることを知ると否とにかかわらず、返還を請求しえない。(大判大8・9・15)

◎酌婦としての稼働契約が公序良俗に反し無効である場合には、これに伴い消費貸借名義で交付された金員の返還請求は許されない。(最判昭30・10・7)

◎不法の原因により贈与した未登記建物の引渡しは、本条にいう「給付」にあたる。(最大判昭45・10・21)

◎不法の原因により既登記建物を贈与した場合には、その引渡しをしただけでは、本条にいう給付があったとはいえない。(最判昭46・10・28)

本条の効果

◎①妾関係維持のために建物を贈与した場合、給付者は不当利得に基づく返還請求が許されないばかりでなく、所有権が自己にあることを理由として、給付した物の返還を請求することは許されない。②贈与者が不当利得に基づく返還請求も所有権に基づく返還請求も本条によって許されない場合、その反射的効果として目的物の所有権は受贈者に帰属する。(最大判昭45・10・21)

但書の趣旨と適用

★女性が、男性に妻のあることを知りながら情交関係を結んだとしても、情交の動機が主として男性の詐言を信じたことに原因している場合で、男性側の情交関係を結んだ動機、詐言の内容程度およびその内容についての女性の認識等諸般の事情を斟酌し、女性側における動機に内在する不法の程度に比し、男性側における違法性が著しく大きいものと評価できるときには、貞操等の侵害を理由とする女性の男性に対する慰謝料請求は、許される。(最判昭44・9・26)

◎消費貸借成立のいきさつにおいて、貸主の側に多少の不法の点があったとしても、借主の側にも不法の点があり、前者の不法性が後者のそれに比しきわめて微弱なものにすぎない場合には、九〇条および本条の適用がない。(最判昭29・8・31)

本条の適用範囲ないし趣旨の類推

◎当事者が不法原因給付を合意解除して給付の返還を特約する場合には、本条を適用する余地はない。(最判昭28・1・22)

◎不当訴訟者のかつての共謀者との間で真実の証言に対して対価を支払う旨の約定をしたとしても、右契約は公序良俗に反するものといわなければならないから、それに基づいて弁済金を提供した者は、不当訴訟者に対して不法行為に基づく損害として、その賠償を求めることができない。(最判昭45・4・21)


 

 

民法第709条〔不法行為の要件と効果〕

故意又は過失に因りて他人の権利を侵害したる者は之に因りて生したる損害を賠償する責に任す

判例

◎甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係をもった場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。(最判平8・3・26)

◎妻および未成年の子のある男性と肉体関係を持った女性が、妻子のもとを去った右男性と同棲するに至った結果、その子が日常生活において父親から愛情を注がれ、その監護、教育を受けることができなくなったとしても、その女性が害意をもって父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り、右女性の行為は、未成年の子が被った不利益との間に因果関係がないから、未成年の子に対して不法行為を構成するものではない。(最判昭54・3・30)

◎不法行為の被害者が、自己の権利擁護のため訴えを提起することを余儀なくされ、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害といえる。(最判昭44・2・27)

◎家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年齢に達するまで、女子雇用労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益をあげるものと推定するのが適当である。(最判昭49・7・19)

◎法定代理人が未成年者を代表して行為する際に不法行為を行った場合には、被害者は未成年者に対しては損害賠償を請求しえない。(大判昭15・10・10)

◎未成年者が責任能力を有する場合であっても、監督義務者の義務違反と当該未成年者の不法行為によって生じた結果との間に相当因果関係を認めうるときは、監督義務者につき本条に基づく不法行為が成立する。(最判昭49・3・22)

◎本条では過失の有無を決定すべき注意の程度を明示していないが、その精神は、普通注意を用いる人が事物の状況に応じて通常なすべき注意を尽くせば足りるものと解すべきである。(大判明44・11・1)

◎過失は、行為が違法の結果を生じうるべきことを認識しながらその結果は生ずることはないであろうとの希望をもって相当の注意を欠く場合のみに存するわけではなく、違法の結果が生じうるとの認識がなくとも相当の注意をすればこれを認識しかつ避けえた場合にも存する。(大判大2・4・26)

◎債務者の占有する動産の強制執行に際し、債務者または第三者が差押物件は債務者の所有ではなく第三者の所有である旨申し出たとしても、債務者または第三者においてその申出に沿う証拠資料を何ら提出しなかったときは、特別の事情のない限り、右執行の遂行につき債権者に過失があったものと推断することはできない。(最判昭30・2・11)

◎本条の「権利」は、厳密な意味においての権利でなくても、われわれの法律観念上その侵害に対し不法行為に基づく救済を与えることが必要であると思惟される利益であれば足りる。-大学湯事件―(大判大14・11・28)

◎第三者の権利の行使を妨げるために訴訟の原告が請求を放棄することおよびその放棄をそそのかしたり共謀したりすることは、不法行為である。(大判昭18・12・14)

◎確定判決に基づいて強制執行がされた場合においても、右判決の成立過程において、原告が被告の権利を害する意図の下に、作為または不作為によって被告の訴訟手続に対する関与を妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔する等の不正な行為を行い、その結果、本来ありうべからざる内容の確定判決を取得してこれを執行し、被告に損害を与えたものであるときは、原告の行為は不法行為を構成するものであって、被告は、右確定判決に対して再審の訴えを提起するまでもなく、原告に対し、右損害の賠償を請求することを妨げない。(最判昭44・7・8)

◎訴えの提起は、提訴者が当該訴訟において主張した権利または法律関係が事実的、法律的根拠を欠くものである上、同人がそのことを知りながらまたは通常人であれば容易にそのことを知りえたのにあえて提起したなど、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り、相手方に対する違法な行為となる。(最判昭63・1・26)

◎不法行為に基づく損害賠償の範囲を定めるにも、四一六条を類推して因果律を定めるべきである。-富喜丸事件-(大連判大15・5・22)

◎不法行為による物の滅失毀損に対する損害賠償の金額は、特段の事由のない限り滅失毀損当時の交換価格による。(最判昭32・1・31)

◎賃貸借契約が解除されていない場合でも、賃貸人は、賃借人から賃料の支払いを受けたなど特別の事情のない限り、賃借権の無断譲受人たる目的物の占有者に対し賃料相当の損害賠償の請求をすることができる。(最判昭41・10・21)

◎現在不法行為が行われており、同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否かおよび賠償すべき損害の範囲いかん等をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点において初めてこれを認定することができ、かつ、右権利の成立要件の具備については債権者がこれを立証すべきものと考えられる場合には、かかる将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有しない。-大阪空港公害訴訟-(最大判昭56・12・16)

◎扶養利益喪失による損害は、相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、扶養を要する状態が存続する期間などの具体的事情に応じて適正に算定すべきである。(最判平12・9・7)

◎相手方の故意または過失を主張してその責任を問わんとする者は、法律に特別の規定がある場合を除き、主張者から証拠を挙示すべきである。(大判明38・6・19)


 


 

民法第710条〔非財産的損害の賠償〕

他人の身体、自由又は名誉を害したる場合と財産権を害したる場合とを問はす前条の規定に依りて損害賠償の責に任する者は財産以外の損害に対しても其賠償を為すことを要す

判例

貞操

◎人妻と姦通した者は、その夫に対し夫権侵害による賠償責任がある。(大判明36・10・1)

有責離婚・内縁不当破棄

◎内縁を不当に破棄された者は、相手方に不法行為上の損害賠償を求めることができる。(最判昭33・4・11)

◎すでに財産分与がなされた場合においても、それが損害賠償の要素を含めた趣旨とは解されないか、または、その額および方法において分与請求者の精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められるものであるときは、右請求者は別個に、相手方の不法行為を理由として離婚による慰謝料を請求できる。(最判昭46・7・23)

慰謝料請求権の性質

◎不法行為による慰謝料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。(最大判昭42・11・1民集21-9-2249)

自由

◎本条の自由は精神活動の自由をも包含すると解すべきであるから、欺罔手段により相手の意思決定の自由を害し財物を騙取した場合には、財産上の損害を賠償するほか、精神上の苦痛に対する慰謝料をも支払わなければならない。(大判昭8・6・8)

名誉・信用・氏名・プライバシー

◎名誉は各人がその性質・行状・信用等について世間から相当に受けるべき評価を標準とするものであるから、ある行為が名誉毀損となるかどうかを決めるには、その行為の性質上一般に人の名誉を毀損すべきものであるかどうかを定めるだけではなく、その人の社会における位置・状況等を参酌して審査しなければならない。(大判明38・12・8)

◎新聞記事の内容が事実に反し名誉を毀損すべき意味のものかどうかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきである。(最判昭31・7・20)

◎名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為は、違法性を欠いて、不法行為にならない。(最判昭41・6・23)


 

民法第711条〔生命侵害に対する慰謝料〕

他人の生命を害したる者は被害者の父母、配偶者及ひ子に対しては其財産権を害せられさりし場合に於ても損害の賠償を為すことを要す

判例

◎①被害者と内縁の妻との間に生まれた子は、709条に基づき被害者の生存によって得べかりし利益の喪失による賠償を請求することができる。
②内縁関係による子は認知されない限り、本条によって慰謝料を請求することができない。(大判昭7・10・6)

◎幼児でも、父の死亡によって将来感ずべき精神上の苦痛について慰謝料請求権を有する。(大判昭11・5・13)

◎不法行為により身体を害された者の母が、そのために被害者が生命を害された場合(本条)にも比肩すべき精神上の苦痛を受けたときは、709条と710条に基づいて自己の権利として慰謝料を請求しうる。(最判昭33・8・5)

◎不法行為により死亡した被害者の夫の妹であっても、この者が、跛行顕著な身体障害者であるため、長年にわたり被害者と同居してその庇護のもとに生活を維持し、将来もその継続を期待しており、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等の事実関係があるときには、本条の類推適用により加害者に対し慰謝料を請求しうる。(最判昭49・12・17)


 

 

民法第719条〔共同不法行為者の責任〕

1 数人か共同の不法行為に因りて他人に損害を加へたるときは各自連帯にて其賠償の責に任す共同行為者中の孰れか其損害を加へたるかを知ること能はさるとき亦同し

2 教唆者及ひ幇助者は之を共同行為者と看做す

判例

1項前段

◎妻が単に夫に従って他人の家屋に同居したのではなく、夫の不法占拠に加担して、ともに所有権を侵害した場合には、共同不法行為者として夫とともに連帯責任を負う。(大判昭10・6・10)

◎本条は、客観的に共同の不法行為によって損害を生ぜしめたことを要するが、共謀その他主観的共同の原因によることを要しないから、故意行為と過失行為による場合でもよい。(大判大2・4・26)

◎共同不法行為が成立するためには、加害者各自の行為と被害者の受けた損害との間に因果関係がなければならない。(大判大8・11・22民録25-2068)

◎本条一項前段の共同不法行為が成立するためには、不法行為者間に意思の共通もしくは共同の認識のあることは必要でなく、単に客観的に権利侵害が共同でなされれば足りる。(最判昭32・3・26)

賠償の範囲

◎共同行為者各自の行為が客観的に関連し共同して流水を汚染し違法に損害を加えた場合において、各自の行為がそれぞれ独立に不法行為の要件を備えるときは、各自が、右違法な加害行為と相当因果関係にある全損害について、その賠償の責めに任ずべきである。(最判昭43・4・23)

連帯責任の性質

◎本条所定の共同不法行為者が負担する損害賠償債務は、いわゆる不真正連帯債務であって連帯債務ではないから、その損害賠償債務については連帯債務に関する四三七条の規定は適用されないものと解するのが相当である。(最判平6・11・24)

求償権

◎使用者甲(タクシー会社)は、衝突事故が被用者乙(運転手)と相手方運転手丙との共同過失によって惹起された場合に、その乗客に対して損害を賠償したときは、甲は乙と丙の過失割合に従って丙に対して求償権を行使することができる。(最判昭41・11・18)


 

民法第721条〔損害賠償請求権における胎児の地位〕

胎児は損害賠償の請求権に付ては既に生まれたるものと看做す

判例

◎胎児の代理人に関する規定は存在しないので、その損害賠償請求につき、母その他親族が、胎児のため加害者となした和解は、胎児を拘束しない。(大判昭7・10・6)

※父母の生命侵害と子の慰謝料請求権に関する民法第711条を参照のこと。

 

 

民法第722条〔損害賠償の方法、過失相殺〕

1 第417条〔債務不履行における損害賠償の方法〕の規定は不法行為に因る損害の賠償に之を準用す

2 被害者に過失ありたるときは裁判所は損害賠償の額を定むるに付き之を斟酌することを得

判例

被害者側の過失

◎夫が妻を同乗させて運転する自動車と第三者が運転する自動車とが、右第三者と夫との双方の過失の競合により衝突したため、傷害を被った妻が右第三者に対し損害賠償を請求する場合の損害額を算定するについては、右夫婦の婚姻関係がすでに破綻に瀕しているなど特段の事情のない限り、夫の過失を被害者側の過失として斟酌することができるものと解すべきである。(最判昭51・3・25)

◎被害自動車の運転手とこれに同乗中の被害者が事故の約三年前から恋愛関係にあったものの、婚姻していたわけでも、同居していたわけでもない場合には、身分上、生活関係上一体をなす関係にあったということはできない。(最判平9・9・9)

◎本条二項にいわゆる過失とは単に被害者本人の過失だけでなく、広く被害者側の過失をも包含する趣旨と解するのが相当である。(最判昭34・11・26)

◎被害者本人が幼児である場合において、被害者側の過失とは、被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうのであり、両親より幼児の監護を委託された者の被用者のような者は含まれない。(最判昭42・6・27)

損害賠償の方法

◎損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払いを求めている場合には、定期金による支払いを命ずる判決をすることはできない。(最判昭62・2・6)


 

民法第724条〔損害賠償請求権の消滅時効〕

不法行為による損害賠償の請求権は被害者又はその法定代理人か損害及び加害者を知った時より3年間これを行はなかったときは時効により消滅する。不法行為の時より20年を経過したるときもまた同じ

判例

◎20年の期間の性質

本条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものである。(最判平1・12・21)

◎不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6か月内において右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6か月内に右不法行為による損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、158条の法意に照らし、本条後段の効果は生じない。(最判平10・6・12)

◎時効の開始時期

夫婦の一方がその配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権の消滅時効は、右夫婦の一方がその同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権につき進行する。(最判平6・1・20)

◎不法行為が継続して行われ、そのために損害も継続して発生する場合には、損害の継続発生する限り日々新しい不法行為に基づく損害として、各損害を知った時から別個に消滅時効が進行する。(大連判昭15・12・14)

◎不法行為によって受傷した被害者が、相当期間経過後、受傷当時には医学的に通常予想しえなかった治療を必要とし、そのため費用を支出するに至ったときは、右治療費についての消滅時効は、後日その治療を受けるまで進行しない。(最判昭42・7・18)

◎不法行為の被害者が弁護士に対し損害賠償請求の訴えを提起することを委任し、成功時に成功額に比例する報酬金を支払う旨の契約を締結した場合には、右契約の時が本条にいう損害を知った時にあたり、その時から右請求権の消滅時効が進行する。(最判昭45・6・19)

◎「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度においてこれらを知った時を意味するところ(最判昭48・11・16)、被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいう(名誉毀損事件)。(最判平14・1・29)

◎遅延利息の時効

不法行為による損害賠償債務の不履行に基づく遅延利息の債権は、3年の時効により消滅する。(大判昭11・7・15)

◎加害者の認識

本条の「加害者を知る」とは、被害者において、使用者ならびに使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実に加えて、一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものであると判断するに足る事実をも認識することである。(最判昭44・11・27)

 

第731条〔婚姻適齢〕

男は満18歳に、女は満16歳にならなければ婚姻をすることができない。

判例

◎婚姻予約は適法有効であり、法律上これにより婚姻することを強制することはできないが、正当の理由なく婚姻予約に違反し婚姻をなすことを拒絶した者は、被害者である相手方に対し有形無形の損害を賠償する責任がある。(大連判大4・1・26)

◎同棲二か月後、妻が夫に性病をうつされ実家に戻り、夫の性病が全治するまで帰家の猶予を求めて通院しているが夫は性病治療に不誠意を示し、二、三日内に戻らねば妻はいらないと放言し、以来物別れになっている場合は、夫は正当の理由なく婚姻予約の履行を不能に陥らしめたもので損害賠償の義務がある。(最判昭27・10・21)

◎内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできる。(最判昭33・4・11)

成立要件

◎法定の婚姻年齢に達しなくても、意思能力を有する者のした婚姻の予約は無効ではない。(大判大8・4・23)

◎儀式は予約の締結を表彰する社交的典礼たるにすぎず、何らの儀式をもあげないで婚姻の予約をなした場合にも、その予約は適法にして有効である。(大判大8・6・1110)

◎配偶者があることを知って将来その婚姻が解消した場合に、互いに婚姻すべき旨の予約は、無効である。(大判大9・5・28)

◎慣習上の儀式をあげなくても、当事者が誠心誠意夫婦となるべき契約をするときは、なお予約があったとみて差し支えない。(大判昭6・2・20)

◎女が男の求婚に対し、真実夫婦として共同生活を営む意思で応じて婚姻を約した上、長期間にわたり肉体関係を継続したものであり、双方の婚姻の意思は明確な場合、たとえその間当事者がその関係を両親兄弟に打ち明けず、結納、同棲をしなかったとしても、婚姻予約は成立する。(最判昭38・9・5)

◎重婚的関係にあることを認識して内縁関係に入った者にも、法律婚が事実上離婚状態にあることを認識し、まじめな夫婦生活を営むつもりでその関係に入り、相手方が離婚状態に至ったことに何らの責任もないような場合は、財産分与の類推適用が許される。(広島高松江支決昭40・11・15)⇒768条

効果

◎挙式同居し事実上夫婦同様の生活をした間になした勤労は、双方合意の上婚姻をしないことにして実家に帰ったからといって、不当利得として返還請求できない。(大判大10・5・17)

◎内縁の夫婦の間に生まれた子は少なくともその内縁の夫の収入により生計を維持することをうべかりし者であって、内縁の夫の生命を侵害した者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することができる。(大判昭7・10・6)

◎七六〇条の規定は内縁に準用されるので、女の支出した医療費は、別居中に生じたものであるけれども、婚姻から生ずる費用に準じ男が分担すべきである。(最判昭33・4・11)

内縁

◎内縁の夫婦が共有する不動産を居住または共同事業のために共同使用してきたときは、特段の事情のない限り、一方死亡後は他方がその不動産を単独で使用する旨の合意が両者間に成立していたと推認される。(最判平10・2・26)

◎財産分与は現に存した夫婦共同生活関係を最終的に規整するものであり、これによって直接第三者の権利に影響を及ぼすものではないから、内縁についてもこれを認めるのが相当である。(広島高決昭38・6・19)⇒768条

◎内縁夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する七六八条の規定を類推適用することはできない。(最決平12・3・10)

第三者の責任

◎内縁の当事者でない者であっても、内縁関係に不当な干渉をしてこれを破綻させたものが、不法行為者として損害賠償の責任を負うべきことは当然である。(最判昭38・2・1)

◎婚姻の予約をし事実上の夫婦生活持続中の女と私通し婚姻をすることができないようにしたときは、予約者の一方の権利を侵害したものであるから、その有形無形の損害を賠償しなければならない。(大判大8・5・12)

結納

◎結納は他日婚姻の成立すべきことを予想して授受する贈与で、婚約が他日合意解除されたときは、受贈者は不当利得としてこれを返還すべき義務を負うものとする。(大判大6・2・28)

◎挙式後八か月余も夫婦生活を続け、その間婚姻の届出も完了し、法律上の婚姻が成立した場合においては、たとえその後結納の受領者たる妻の申出により協議離婚をするに至ったとしても、妻には右結納を返還すべき義務はない。(最判昭39・9・4)


 

第733条〔再婚禁止期間〕

1 女は、前婚の解消又は取消の日から6箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

2 女が前婚の解消又は取消の前から懐胎していた場合には、その出産の日から、前項の規定を適用しない。

判例

◎本条は、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の予防を目的とする以上、憲法一四条一項に違反しない。(最判平7・12・5)


 

 

第739条〔婚姻の方式〕

婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによつて、その効力を生ずる。

2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上から、口頭又は署名した書面で、これをしなければならない。

判例

◎婚姻の届出が、夫の本籍地または所在地でない地の戸籍吏に対してなされた場合でも、戸籍吏が右届出を受理した以上、届出の効力を生ずる。(大判昭11・12・4)

◎婚姻届が戸籍吏に受理された以上戸籍簿に記入されなくても、その婚姻は有効に成立する。(大判昭16・7・29)


 

第742条〔婚姻の無効〕

婚姻は、左の場合に限り、無効とする。
人違その他の事由によつて当事者間に婚姻をする意思がないとき。
当事者が婚姻の届出をしないとき。
但し、その届出が第739条第2項〔婚姻の届出の方法〕に掲げる条件を欠くだけであるときは、婚姻は、これがために、その効力を妨げられることがない。

判例

◎事実上の夫婦共同生活関係にある者が、婚姻意思を有し、その意思に基づいて婚姻の届出書を作成したときは、届書の受理された当時意識を失っていたとしても、その受理前に翻意したなど特段の事情のない限り、右届書の受理により婚姻は有効に成立する。(最判昭44・4・3)

◎婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があったとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻は効力を生じない。(最判昭44・10・31民集23-10-1894)

◎事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合において、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、かつ、後に他方の配偶者が届出の事実を知ってこれを追認したときは、右婚姻は追認によりその届出の当初に遡って有効となると解すべきである。(最判昭47・7・25)

◎婚姻の無効確認請求が信義則に照らして許されないかどうかは、当事者以外の利害関係人の身分上の地位に及ぼす影響等をも考慮して判断しなければならない。(最判平8・3・8)   


 

 

第752条〔同居・協力・扶助義務〕

夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。

判例

◎夫もまた妻に対して貞操を守る義務を負う。(大決大15・7・20)

◎夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する審判は、夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、たとえば、同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分であり、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分である。審判確定後は審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については、公開の法廷における対審および判決を求める途が閉ざされているわけではない。(最大決昭40・6・30)

◎配偶者の一方が他方に対し離婚訴訟を提起しながら扶助の請求をしても、離婚訴訟を提起しているというだけでは、扶助請求権の行使をもって権利濫用ということはできない。(福岡高決昭32・4・30)

◎夫婦の一方がその配偶者と第三者との同棲により第三者に対して取得する慰謝料請求権の消滅時効は、右夫婦の一方がその同棲関係を知った時から、それまでの間の慰謝料請求権につき進行する。(最判平6・1・20)

◎甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係をもった場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時すでに破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。(最判平8・3・26)


 

第754条〔夫婦間の契約取消権〕

夫婦間で契約をしたときは、その契約は、婚姻中、何時でも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。但し、第三者の権利を害することができない。

判例

◎婚姻が実質的に破綻している場合には、それが形式的に継続しているとしても、本条の規定により、夫婦間の契約を取り消すことは許されないものと解するのが相当である。(最判昭42・2・2)

 

第760条〔婚姻費用の分担〕

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

判例

◎家事審判法9条1項乙類3号の婚姻費用の分担に関する処分の審判は、非訟事件の裁判であり、公開の法廷における対審および判決によってなされる必要はなく、憲法82条および32条の規定に反するものではない。費用負担義務の存否の終局的な確定は、公開法廷における対審および判決によってなされるべきである。婚姻費用の分担額を決定するにあたり、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はない。(最大決昭40・6・30)

◎調停によって将来にわたり支払うこととされた婚姻費用分担に関する債権を被保全債権として詐害行為取消権が成立する。(最判昭46・9・21)

◎当事者が別居状態にあるときは、その別居の原因が、扶助を求め、生活費を請求する側の責に帰すべき場合にのみ、その別居事由を婚姻費用の分担決定にあたり考慮すべきものである。(福岡高決昭46・11・1)

◎婚姻費用の分担額は家庭裁判所が決定すべきであって、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない。(最判昭43・9・20)


 

第761条〔日常家事による債務の連帯責任〕

夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。但し、第三者に対し責に任じない旨を予告した場合は、この限りでない。

判例

◎本条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきであり、夫婦の一方が本条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を超えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に110条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときに限り、同条の趣旨を類推して第三者の保護を図るべきである。(最判昭44・12・18)

◎妻が子の工場建設資金を捻出するため、夫所有の不動産を処分した場合に、たとえ夫が妻と相談しかかる企図を有していたとしても、妻の右処分行為はいわゆる日常家計上の行為に該当するものではない。(最判昭43・7・19)

◎夫婦が長期間別居し、生計を異にし、夫婦の共同生活は破綻に帰していた場合には、夫婦の日常家事に属する行為はありえない。(大阪高判昭49・10・29)


 

第762条〔特有財産、帰属不明財産の共有推定〕

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。

2 夫婦のいずれに属するか明かでない財産は、その共有に属するものと推定する。

判例

◎本条1項の規定は、夫婦がその一方の財産を合意の上で他方の所有名義とした場合にまで、これをその所有名義人の特有財産とする趣旨ではない。(最判昭34・7・14)   


   

第764条〔成年被後見人の離婚、届出、詐欺・強迫による離婚〕

第738条〔成年被後見人の婚姻〕、第739条〔婚姻の方式〕及び第747条〔詐欺・強迫による婚姻の取消し〕の規定は、協議上の離婚にこれを準用する。

判例

◎合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を翻意し、右翻意を市役所戸籍係員に表示しているときは、相手方に対する翻意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。(最判昭34・8・7)

◎妻を戸主とする入夫婚姻をした夫婦が、夫に戸主の地位を与えるための方便として、協議離婚の届出をした場合でも、両名が真に法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてこれをしたものであるときは、右協議離婚は無効とはいえない。(最判昭38・11・28)

◎別居中の妻の不知の間に夫が勝手に協議離婚届を提出したが、その後、妻が夫から慰謝料の支払いを受ける合意が成立した場合には、妻は右調停成立の際協議離婚を追認したものといえる。(最判昭42・12・8)

◎戸籍上の届出のある配偶者でも、婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないときには、遺族給付を受けるべき配偶者にあたらない。(最判昭58・4・14)


 

第766条〔子の監護者の決定〕

父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者 その他監護について必要な事項は、その協議でこれを定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。

②子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。

③前二項の規定は、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生ずることがない。

判例

◎離婚の訴えにおいて、別居後単独で子の監護にあたっている当事者から他方の当事者に対し、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払いを求める旨の申立てがあった場合には、裁判所は、離婚請求を認容するに際し、右申立てにかかる子の監護費用の支払いを命ずることができる。(最判平9・4・10)

◎離婚後親権もしくは監護権を有しない親は、未成熟子の福祉を害することがない限り、未成熟子との面接交渉権を有し、その行使に必要な事項につき、他方の親との協議が調わないとき、またはできないときは、家庭裁判所が監護に関する処分として命ずることができる。(東京家審昭39・12・14)

◎婚姻関係が破綻して父母が別居状態である場合であっても、子と同居していない親が子と面接交渉することは、子の監護の一内容である。別居状態にある父母の間で、面接交渉につき協議が調わないとき、または協議することができないときは、家庭裁判所は、本条を類推適用し、家事審判法九条一項乙類四号により、面接交渉について相当な処分を命ずることができる。(最決平12・5・1)

◎親権者または監護者が親権者または監護者でない親に対し子の引渡しを求めることは、子の監護者の指定変更を伴わない場合であっても、独立して子の監護に関する処分として家事審判事項となりうる。(福岡高決昭52・3・29)


 

第768条〔離婚による財産分与〕

協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

②前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。但し、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。

③前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によつて得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

判例

◎財産分与請求権は、必ずしも相手方に離婚につき有責不法の行為のあったことを要件とするものではなく、慰謝料請求権とは本質を異にし、権利者は両請求権のどちらかを選択して行使することもできる。(最判昭31・2・21)

◎財産分与がなされても、それが損害賠償を含めた趣旨と解せられないか、そうでないとしても、その額および方法において、請求者の精神的苦痛を慰謝するには足りないと認められるときは、別個に慰謝料を請求することができる。(最判昭46・7・23)

◎裁判所は当事者の一方が過当に負担した婚姻費用の清算のための給付をも含めて財産分与の額および方法を定めることができる。(最判昭53・11・14)

◎「一切の事情」とは、当該訴訟の最終口頭弁論当時における当事者双方の財産状態のごときものも包含する。(最判昭34・2・19)

◎協議あるいは審判等によって具体的内容が形成される前の財産分与請求権を保全するために債権者代位権を行使することは許されない。(最判昭55・7・11)

◎財産分与は、分与者がすでに債務超過の状態にあり当該分与により一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、特段の事情のない限り、債権者取消権の対象とならない。(最判昭58・12・19)⇒424条(14)

◎①離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、424条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消される。

②離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償債務の額を超えた部分について、詐害行為取消権行使の対象となる。(最判平12・3・9)⇒424条(17)

◎離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は詐害行為とならないが、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分は慰謝料支払いの名を借りた金銭の贈与ないし対価を欠いた新たな債務負担行為であるから、詐害行為の対象となりうる。(最判平12・3・9)


 

第770条〔裁判上の離婚原因(法定離婚原因)〕

夫婦の一方は、左の場合に限り、離婚の訴を提起することができる。

 1 配偶者に不貞な行為があつたとき。
 2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
 4 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込がないとき
 5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

②裁判所は、前項第1号乃至第4号の事由があるときでも、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。  

第1号(配偶者に不貞な行為があったとき)の判例

不貞行為の意味

不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意志に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶ行為のことをいう。相手方の自由な意思に基づくものであるか否かは問わない。(最判昭48.11.15)

第2号(配偶者から悪意で遺棄されたとき)の判例

遺棄の意味

 遺棄とは、正当な理由なくして民法752条に定める夫婦としての同居及び協力扶助義務を継続的に履行せず、夫婦生活というにふさわしい共同生活の維持を拒否することをいう。(新潟地判昭36.4.24)

悪意の遺棄に当たらない事例

妻が婚姻関係の破綻について主たる責任を負い、夫からの扶助を受けないようになったのも自ら招いたものである場合においては、夫が妻と同居を拒みこれを扶助しないとしても、悪意の遺棄にあたらない。(最判昭39・9・17)

第3号(配偶者の生死が3年以上明らかでないとき)の判例

◎生死不明となるに至った原因は問わない(大津地判昭25.7.27) 

第4号(強度の精神病にかかり回復の見込みがない時)の判例

回復し難い強度の精神病の意義

強度の精神病とは、民法752条の義務が十分に果たされない程度の精神障害を意味し、必ずしも禁治産宣告の理由となる精神障害ないしは精神的死亡に達していることを要しない。(長崎地判昭42.9.5)

離婚請求が認められるための最低条件

心神喪失の状況にあって、いまだ禁治産の宣告を受けない者に対し離婚訴訟を提起せんとする夫婦の一方は、まず他方に対する禁治産の宣告を申請し、その宣告を得て人事訴訟手続法四条により禁治産者の後見監督人または後見人を被告として訴えを起こすべきである。
 夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついた上でなければ、離婚の請求は許されない。(最判昭33・7・25)

離婚請求が認めれた事例

妻が精神病にかかり、回復の見込みがなく、また妻の実家が療養のための経済的能力があり、一方夫の生活が必ずしも裕福でない等の事由がある場合は、本条2項による離婚請求を棄却できないとされた事例。(最判昭45・11・24) 

第5号(その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)の判例

有責配偶者からの離婚請求を全面的に否定した判例

夫が妻をさしおいて他に情婦を持ち、それがもとで妻との婚姻関係継続が困難になった場合には、夫の側から本条1 項5号によって離婚を請求することは許されない。このような離婚請求が認められるならば、妻は全く俗にいう「踏んだり蹴ったり」であり、法はかくのごとき不徳勝手きままを許すものではない。(最判昭27・2・19)

破綻後の不貞行為

夫が、妻との間の婚姻関係が完全に破綻した後に、妻以外の女性と同棲し、夫婦同様の生活を送ったとしても、これをもって離婚請求を排斥すべき理由とはならない。(最判昭46・5・21)

有責配偶者からの離婚請求を例外的に認めた判例

離婚請求は信義誠実の原則に照らしても容認され得るものでなければならないが、別居が年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟子がいない場合には、離婚により相手方がきわめて苛酷な状態におかれる等著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもってその請求が許されないとすることはできない。(最大判昭62・9・2)

有責配偶者からの離婚請求に関する別居期間

有責配偶者からの離婚請求の拒否を判断するにおいて、別居期間(本件は8年)が相当の長期間といえるか否かは、当事者双方の諸事情の変容による社会的意義の変化なども考慮に入れるべきである。※別居期間8年弱の夫婦において、離婚請求者が生活費を負担し、財産関係の清算に誠意ある提案をしているなどの事情の下で、離婚請求を認めた事例。(最判平2・11・8)

有責配偶者からの離婚請求にあたり未成熟子がいる場合

◎有責配偶者からの離婚請求で、その間に未成熟の子がいる場合でも、ただその一事をもってその請求を排斥すべきではない。(最判平6・2・8)

有責配偶者からの離婚請求(双方有責の場合)

◎夫婦の一方にもいくらかの落ち度は認められるが、他方により多大の落ち度があるときには、前者(落ち度の軽い方)の離婚請求は認められる。(最判昭30.11.24) 

各号の相互関係

◎本条1項4号(配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき)の離婚原因を主張して離婚の訴えを提起したからといって、反対の事情のない限り5号(その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき)の離婚原因も主張されているものと解することは許されない。
4号の離婚原因がない場合に、もし5号をも主張するのであれば、更に一層詳細な審理をした上、その当否が判断される(最判昭36・4・25)  


 

民法第877条〔扶養義務者〕

1 直系血族及び兄弟姉妹は、互に扶養をする義務がある。

2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合の外、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

3 前項の規定による審判があつた後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

判例

◎過去の扶養料は、履行遅滞後の分に限り、請求することができる。(大判明34・10・3)

◎親権を行う親と親権を行わない親の子に対する扶養義務は、ともに本条にその根源を有し、その性質はともに生活保持の義務である。(広島家呉支審昭34・7・28)


 

民法第878条〔扶養の順位〕

扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するに足りないとき、扶養を受けるべき者の順序についても、同様である。

判例

◎扶養義務の後順位者(離婚により家を去った母)が、先順位者(離婚後も家を同じくする父)の負担する扶養義務の範囲において先順位者のためにその扶養義務を履行した場合は、その範囲で先順位者から養育費の償還を請求し、または現に受けた利益の返還を請求することができるが、後順位者が先順位者のためにする意思をもってでなく、子に対する愛情からこれをそのひざもとに置くために養育した場合は、養育費の償還又は不当利得の返還を請求する権利を有しない。(大判大5・2・29)

◎扶養義務者甲が、現に扶養をしている扶養義務者乙の意に反して被扶養者を引き取って扶養したという事実だけでは、乙は全面的に義務を免れ、費用を出す義務もなく甲だけが全費用を負担しなければならない、とするのは不当である。(最判昭26・2・13)

◎未成熟養子に対する扶養義務はまず第一次的に養親に存し、実親の扶養義務は次順位にあるが、養母が同時に非嫡出子の実母であるときは、実父はその実母=養母と同順位で生活保持義務を負う。(仙台高決昭37・6・15)

◎非嫡出子を認知した父は、親権者でなくても、親権者である母と同順位で、その資力に応じて共同してこれを扶養する生活保持の義務がある。(広島高決昭37・12・12)


 

民法第879条〔扶養の程度または方法〕

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

判例

◎10歳前後の少年が母の監護の下に同居生活をしている場合に、母子の生活費を截然区別することは困難であるから、そのような場合は母の全収入を両者の生活費中に組み入れた上、母子の生活費を一体として勘考すべきである。(東京高決昭26・5・30)

◎扶養権利者を扶養してきた扶養義務者が他の扶養義務者に対して過去の扶養料を求償する場合でも、各自の扶養分担額は、協議が調わない限り家庭裁判所が審判で定めるべきであって、通常裁判所が判決手続で定めることはできない。(最判昭42・2・17)

◎老親に対する子の扶養義務は、生活扶助の義務としての性質をもち、扶養義務者の社会的地位、収入等相応の生活をした上で余力を生じた限度で分担すれば足りる。(大阪高決昭49・6・19) 


 

民法第881条〔扶養請求権の処分禁止〕

扶養を受ける権利は、これを処分することができない。

判例

◎未成年者の扶養義務者である父母の間でその一方が他方に対し養育費を請求しない旨の念書を差し入れたとしても、それが子の親権者として子を代理し、父に対して生ずる将来の扶養請求権の放棄であれば本条によりその効力がないことは明らかであり、また、仮に前記母が負担する養育費を父に求償しないことを定めたにすぎないものであれば、右協議は両扶養義務者間でいわば債権的な効力をもつにすぎないから、扶養権利者がその具体的必要に基づいて扶養料の請求をすることは何ら妨げない。(札幌高決昭43・12・19)

 

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