養育費の取り立て・強制執行

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将来分の養育費の差し押さえ

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平成15年8月、養育費の回収方法について重大な法改正(民事執行法の一部改正)があり、平成16年4月1日から利用できるようになりました。

従来は滞納分の養育費しか強制執行ができなかったため、滞納のたびに強制執行の手続きを行う必要がありました。

しかし、法改正後は、養育費が1回でも滞納した場合、滞納分だけではなく「将来分の養育費」についても「相手方の給料などに限って」差し押さえることができるようになりました。

簡単に言うと、1回強制執行の手続きをすれば、その後は強制執行をする必要がなくなったということです。

また、養育費に関しては差押金額の上限も、給与から税金と社会保険料を差し引いた金額の「4分の1」から「2分の1」に引き上げられました。

慰謝料財産分与の分割払いに基づく場合は、4分の1の限度でしか差し押さえられないことを考えると、「養育費」という名目の方が、後々の強制執行に関して言えば有利と言えるかもしれません。

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強制執行に必要な相手方の住所・勤務先

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養育費が不払いになった場合、債務名義(調停調書や公正証書など)に基づいて強制執行を検討することになりますが、養育費の差し押さえに関しても最も効果的かつ重要な相手方の財産といえばそれは「給料」です。

離婚する際は、事前に長期の別居でもしていない限り、相手方の勤務先は把握していることだと思います。

しかし、一旦離婚した後に相手方が転居や転職したような場合はどうでしょう。勤務先どころか、相手方の住所すらわからない、といった事態も当然あり得るわけです。

離婚する際の契約書に「養育費の支払い期間中に住所や勤務先に変更があった場合は、変更があった日から○日以内に変更後の事項を相手方に連絡すること」といったような条項を加えておくのも一つの手ではあります。

しかし、いくら契約書を作成したと言っても、違約金等の定めでもなければ実効性に乏しいので、反故にされてしまう可能性も高いでしょう。

結局、最終的には自分で相手方の住所や勤務先を調べなければならないわけですが、そうなるとどうやって調べるかを検討する必要が出てきます。

夫本人、あるいは夫の親族・友人・知人等から聞けるのであれば問題ありませんが、そうでないなら自分で調べるか探偵などの機関に調査を依頼するしかありません。

正直なところ、お金に余裕があるなら探偵に調査を依頼した方が早いでしょう。もちろん、住所や勤務先の調査は、不倫の調査などと違ってやり易い部類に入る調査であるとは思います。

しかし、いざ素人が調査するとなると、どこから動いていいかわからず時間だけが過ぎてしまうこともしばしばで、最も大事な”勢い”を失ってしまうことが多いようです。

住所などは「元配偶者」という立場から、住民票や戸籍の付票や住民票の除票などを取得して現在の住所を調べる方法もありますが、勤務先はこれらの書面に記載されていないので、それなりの調査が必要となります。

確定判決などの債務名義(公正証書は除く)があるなら、「財産開示手続き」などによって、勤務先や収入を明らかにするよう求めることもできます。

ただ、財産開示手続きは裁判で勝訴が確定し、強制執行をしても全額回収できなかった場合に初めて利用できるようになるハードルの高い手続きなので、現実的には利用しづらいかもしれません。

いずれにしても、相手方の住所・勤務先の調査は強制執行において最も重要な情報となりますので、相手方の動き(転居・転職)が逐一入ってくるような体制を、予め整えておくのが賢明と言えるでしょう。

なお、一旦相手方の給料に強制執行をした後、相手方の勤務先が変わった場合は、新しい勤務先に対して再度強制執行を行わなければなりません。

また、会社から支払ってもらうようにするためには再度、会社と交渉する必要があります。面倒ではありますが、子供のためにも根気強く請求を続けていきましょう。

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財産開示手続

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債権者の申立てにより,裁判所が債務者に財産の開示を命じる制度(財産開示手続)が新しく設けられました。

従来は、判決等を得て、強制執行をしようとしても、相手方(債務者)がどのような財産を持っているか分からないことがありました。

しかし、改正後は、相手方がどのような財産を持っているのか分からない場合に、相手方に財産目録を作成・提出させ、裁判所に呼び出し、宣誓・陳述させることによって、財産の状況を明らかにしてもらうことができるようになりました。

申立資格を持つのは、執行力(強制執行を認めるという裁判所のお墨付き)のある確定判決や和解調書等を有する債権者とされていますが、執行力があるものであっても公正証書ではダメです。

また、申立に際しては「債権者が債務者の財産を競売しても回収できなかった場合」ないしは「回収できそうもないと説明できた場合」であることが要件となりますので注意が必要です。(改正民事執行法第197条)

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自営業者に対する強制執行

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自営業者に対する強制執行はサラリーマンに対する強制執行に比べて少し難しいところがあります。なぜなら、サラリーマンの給料に相当する収入(売り上げ)を自在に隠してしまう可能性があるからです。

なんせ、税務署に対しては所得ゼロと申告しておきながら高級車を乗り回している人もいると言われる自営業者の世界。

強制執行の可能性を感じた途端、自家用車の名義を他人の名義に変えたり、所在の判明しにくい海外の銀行にお金を移したりなど、財産を隠匿する可能性もあるからです。

会社の売り上げ(未回収の債権)に対して強制執行したくても、普通の債務者はどこにそんな債権があるのかわからず、不動産・預貯金等の財産についても債務者名義のものが全く無いとなれば、途方に暮れてしまう人も多いことでしょう。

しかし、全く手が無いわけではありません。債務者の会社の売り上げが最初は分からなくても、業種によっては「お得意先」といえるような会社が、ちょっとした聞き込みだけで簡単に判明することもあります。

そのような会社が一つでも判明すれば、債務者の会社のお得意様に対する売上債権に対して強制執行(債権執行)をすることができるようになります。

自営業者は信用第一です。お得意様に強制執行の事実が知れようものなら信用はガタ落ちとなり、取引を継続するのが困難になることは必至となるでしょう。

同様に、今度は自営業者の近隣にある金融機関に対して、片っ端から強制執行をかけます。大きな預貯金に当たれば一気に回収できますし、大した預貯金に当たらなくても、債務者が強制執行を受けたとなれば、その会社は確実に信用を失います。

もし、金融機関との契約で借金をしているとしたら、普通は借金をする際に「強制執行を受けた場合、債務者は期限の利益を失い、即時残債務を返済する」といったような期限の利益を失う約定(期限の利益喪失約款)をしているはずなので、現在分割で払っている借金について一括返済を求められることになるでしょう。

この理屈は他の債務についても同様ですから、会社の資金繰りがたちまち悪化してしまうことでしょう。さらに、取引先に強制執行を受けたことがバレれば、当然信用はガタ落ちとなり、仕入れも現金先払いが求められることになり、ビジネスにおいては致命的な打撃を受けると言っても過言ではないでしょう。

また、債権執行(売上金や預貯金に対する強制執行以外にも、動産執行という強制執行があります。相手方が何らかの自営業をしているのであれば、営業に必要な機器(パソコン・電話機・ファックス・コピー機など)も最低限はあるはずです。そのような機器に対して動産執行をするのです。

動産執行は強制執行できる財産に厳しい制約があるため、満足な回収に繋がらないケースが多いと言えますが、自営業を営む上で重要な財産に強制執行をされると、債務者はたちまち困るはず。

もし、運よくレジスターなど見つけようものなら、その中にある現金も差し押さえることができます。

このように、一般的には自営業者に対してもそれなりの対応策があるわけですが、上記のように強引に取り立てて債務者の会社が信用を失い、結果的に会社が潰れるようなことにでもなれば、債権者としても回収が困難となりますので、強制執行は慎重に行う必要があります。

色々書きましたが、まずは債務者に対して今後の流れをきちんと説明して催促してみましょう。

債務者も、最悪の事態を予期できる頭があるなら、それなりの対応をしてくるはずです。逆にまともな対応をしてこないなら・・・そのときは上記のような法的措置に移るしかないでしょうね。

自営業者に対する強制執行について書きましたが、支払いを拒絶する相手方にもそれなりに汲み取ってあげなければならない理由があるケースも多々あります。

いくら養育費を請求する権利があるとは言っても、受け取る方もそれなりに相手方に対する感謝の気持ちを持つ必要はありますので、この点をくれぐれも理解し、基本的には冷静な対話、誠実な対応で解決するよう心掛けてください。

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